精肉業界は、食肉のカットや販売、衛生管理など多面的なスキルが求められる専門性の高い仕事です。
大手スーパーや個人経営の精肉店、食肉加工工場など、活躍の場が多い一方、年々「食の安全意識」も高まっており、資格を取得することで専門性・信頼性を示すことが重要になっています。
本記事では、まず資格の重要性や種類・選び方を解説し、続いて国家資格・必置資格・民間資格の3つのカテゴリに分けた精肉業界で役立つ主要資格一覧をご紹介します。
精肉業界における資格の重要性

精肉業界で働く際には、単に技術があるだけではなく、食品衛生や品質管理などに関する厳しい基準を満たす必要があります。そこで大きな武器となるのが資格です。資格を取得していると、自分のスキルや知識を客観的に証明できるうえ、衛生面や法律面をしっかり把握している人材として信頼を得やすくなります。
資格の持つ価値 | 具体的なメリット |
---|---|
専門性のアピール | 衛生管理やカット技術など、目に見えにくいスキルを証明 |
信頼性向上 | 顧客・取引先に対しても「安心安全」をPRしやすい |
キャリアアップ | 昇進や管理職登用時の判断材料として評価されやすい |
独立や開業 | 置資格(食品衛生責任者)などは店舗運営で必須 |
精肉業界の資格は単なる肩書きではなく、プロフェッショナルとしての責任と能力を示す重要な証明となります。キャリア形成においても、顧客からの信頼獲得においても、資格の価値は今後ますます高まっていくでしょう。
資格の種類

精肉業界で取得できる資格は、大きく「国家資格」「必置資格」「民間資格」の3種類に分けられます。それぞれ管轄機関や目的、難易度が異なるため、まずはざっくりとした特徴を知っておきましょう。
【国家資格】
- 国が法令に基づいて認定・管理している
- 「食品衛生管理者」「ハム・ソーセージ・ベーコン製造技能士」など
- 社会的信頼度が高く、昇進や転職で有利になりやすい
【必置資格】
- 法律で「事業所に1名以上配置せよ」と義務付けられる資格
- 「食品衛生責任者」など
- 開業や店舗運営に必須。難易度は比較的低いが重要度は極めて高い
【民間資格】
- 業界団体や協会が独自に主催する資格
- 「食肉販売技術管理士」「部分肉製造技能士(豚・牛・鶏)」「お肉検定」など
- 実務に直結した技術や知識を身につけやすい
国家資格は公的な信頼度が高く、必置資格は法律上必要、民間資格は実務で使える知識が多いという特徴があります。
どの資格を優先するか、自分のキャリアビジョンや現在の状況を考えながら選択することが大切です。
資格選びのポイント

「どの資格を取ればいいのか分からない…」という方は、まず自分の目標や使える時間、費用などを明確にしておきましょう。資格によって必要な実務経験や受験要件が異なる場合も多いので、無理のない計画を立てることがポイントです。
資格は取るだけで終わりではなく、「どのように活かすか」が最も重要です。自分のキャリアを明確にして、無理のないスケジュールと費用内で計画的に取得を目指しましょう。
キャリアプランとの整合
将来のビジョンに合わせた資格選びが重要です。店舗管理や独立開業を目指すのか、あるいは加工技術のスペシャリストを目指すのかによって、取得すべき資格は異なります。
例えば、管理職を目指す場合は食品衛生管理者などの国家資格や必置資格の取得が効果的です。これらの資格は店舗運営において法的な裏付けとなるだけでなく、管理者としての知識を体系的に学ぶ機会にもなります。
難易度・費用・勉強時間の把握
資格取得を検討する際は、現実的な計画を立てることが成功への近道です。年に1回しか実施されない試験もあるため、試験日程は早めにチェックし、逆算して準備を始めることが大切です。
また、講習費や受験料の予算、そして日々の業務と並行して確保できる勉強時間も慎重に見積もる必要があります。職場によっては資格取得支援制度があるケースもあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
資格取得後の活用イメージ
資格取得は目的ではなく手段です。取得した資格をどのように活かすかをあらかじめイメージしておくことが重要です。
例えば、会社内でのキャリアアップや昇進に活用するのか、あるいは「精肉の専門家」としての知識を販促活動やメニュー提案に活かすのかなど、具体的な活用方法を考えておくことで、モチベーション維持にもつながります。
精肉業界の主な資格一覧

ここからは、精肉業界で実際に取得が検討されることの多い資格を、「国家資格」「必置資格」「民間資格」の3カテゴリに分けて9つの資格を紹介します。
各資格で得られるスキルやメリットは異なるので、ぜひ比較検討してみてください。
資格名 | 種類 |
---|---|
ハム・ソーセージ・ベーコン製造技能士 | 国家資格 |
食品衛生管理者 | 国家資格 |
食品衛生責任者 | 必置資格 |
食肉販売技術管理士 | 民間資格 |
豚部分肉製造技能士・牛部分肉製造技能士(1級・2級) | 民間資格 |
お肉検定(1級・2級) | 民間資格 |
お肉ソムリエ | 民間資格 |
HACCP普及指導員 | 民間資格 |
ISO22000審査員 | 民間資格 |
ハム・ソーセージ・ベーコン製造技能士(国家資格)
ハムやソーセージ、ベーコンなどの食肉加工品を製造するうえで必要な高度な技術を証明する国家資格です。大手メーカーのほか、専門のハム工房などでも重宝されます。
ハム・ソーセージ・ベーコン製造技能士は、食肉加工のスペシャリストとして業界内での評価が非常に高い資格です。製造ラインから品質管理、商品開発まで担える幅広いスキルを証明できるため、食肉加工業界でのキャリア形成において大きな強みとなります。
取得方法
この資格を取得するためには、実務経験をもとに学科試験と実技試験の両方に合格する必要があります。試験では、加工工程や調味技術、製造ラインの衛生管理能力などが総合的に評価されます。特に実技試験では実践的な加工技術が問われるため、日頃の業務での技術向上が重要です。
難易度・メリット
国家資格としての信用度が高く、取得することで昇進・給与アップにつながりやすい点が大きなメリットです。また、スーパーのデリカ部門や加工工場でのキャリアアップにも最適な資格といえます。実務に即した内容であるため、日々の業務の質も向上します。
参考サイト: 厚生労働省 「技能検定」
食品衛生管理者(国家資格)
食品を製造・加工する施設では、衛生管理が欠かせません。食品衛生管理者はそうした施設の衛生統括を行う国家資格で、大規模工場や大手企業で重視されます。
食品衛生管理者は、大量生産現場や大手メーカーの衛生監督として必須のポジションです。管理職を目指す方にとっては、キャリアアップにおいて重要な資格となります。
取得方法
この資格を取得するためには、厚生労働省が指定する養成施設での課程修了、または特定の講習会を受講する必要があります。食品衛生に関する専門知識(微生物学、法規、施設管理など)を学習し、試験に合格することで資格を得られます。内容は実務に直結する知識が中心となるため、現場での経験が学びを深めることにつながります。
難易度・メリット
法的にも重要度の高いポジションのため、管理職候補として評価が向上することが大きなメリットです。食品衛生責任者よりも高度な知識を活かし、大手工場や管理部門へのキャリアアップの可能性が広がります。
大規模な食肉加工場や工場では、衛生全般の統括責任者として配置が義務付けられているため、就職や昇進において評価される傾向があります。
参考サイト: 厚生労働省 「食品衛生管理者」
食品衛生責任者(必置資格)
飲食店や食品販売の現場で法的に配置が義務付けられる資格です。店舗や小規模事業者で食品を扱う際には必須となるため、独立・開業を視野に入れる人も取得を検討しましょう。
食品衛生責任者は、小規模店舗や個人経営の精肉店、飲食店にはなくてはならない資格です。取得が手軽なので、今後のキャリアを考えるなら早めに取っておくと良いでしょう。
取得方法
この資格を取得するためには、各自治体が実施する1日講習を受講(約6~7時間)する必要があります。講習では食品衛生の基礎知識や法規制について学び、書類の提出を経て「食品衛生責任者」の資格が発行されます。短期間で取得できるため、仕事をしながらでも無理なく資格取得が可能です。
難易度・メリット
難易度は低く、比較的短時間で取得可能な点が特徴です。必置資格のため、個人店開業時や店舗管理者になる際に必須となります。精肉店や食肉を扱う小売店の責任者として働く場合や、将来的に独立を考えている場合には、必ず取得しておくべき基本的な資格です。食品を扱う現場でのキャリアアップにおいて最初のステップとなります。
参考サイト:東京都食品衛生協会 「食品衛生責任者養成講習会」
食肉販売技術管理士(民間資格)
食肉販売技術管理士は、精肉販売におけるカット技術・接客・衛生管理などを総合的に学ぶ民間資格です。販売スキルの証明として、店舗チーフや店長を目指す方に適した資格です。
食肉販売技術管理士は、現場の販売ノウハウと加工知識をバランス良く学べる点が特徴です。より専門性の高い接客や店舗運営に携わりたい方は、取得を検討してみるとよいでしょう。
取得方法
この資格を取得するためには、講習や通信教育を受講するか、実務経験が一定年数あると受験が可能になります。試験は筆記や実技があり、販売に必要な理論と実践力の両方が評価されます。現場経験を積みながら学ぶことで、より実践的な知識を身につけることができます。
難易度・メリット
販売と加工知識の両方が身につくため、現場で即戦力として評価される点が大きなメリットです。店舗責任者やチーフへのキャリアアップに役立ち、精肉売場での専門性を高めることができます。資格取得者は “食肉販売のプロ” として専門的な知識を持つ人材として認められ、精肉部門での信頼性向上につながります。
参考サイト:全国食肉学校(日本食肉協議会) 食肉販売技術管理士
豚部分肉製造技能士・牛部分肉製造技能士(1級・2級)(民間資格)
豚・牛それぞれの部位の加工技術を認定する民間資格です。部位ごとの特性を深く理解し、効率よく処理・カットできる技術を証明します。
部分肉製造技能士は、加工技術を極めたい方に最適な資格です。実務に直結するスキルが身につくため、給与面や役職面でのアピールにも効果的です。
取得方法
この資格を取得するためには、食肉処理場や精肉店での実務経験に加え、学科・実技試験に合格する必要があります。試験では部位ごとのカット工程を正確に行う技術や、鮮度・衛生管理の知識が問われます。日々の業務で培った技術が試験に直結するため、現場での経験を重ねることが取得への近道となります。
難易度・メリット
実務経験が不可欠であり、現場の加工技術を証明する最適な資格です。社内での評価だけでなく、転職市場でも「肉の専門家」として信頼度が高まります。
豚肉・牛肉の各部位のカット技術や特性理解など、精肉加工の高度な技術力を認定する点が特徴で、1級と2級に分かれており、1級は上級スキルを証明することができます。専門性の高い技術職としてのキャリア形成に役立ちます。
参考サイト:全国食肉学校(日本食肉協議会) 食肉処理製造技術(部分肉)
お肉検定(1級・2級)(民間資格)
お肉検定は、肉の部位や調理法、衛生管理・栄養学など、お肉全般の知識を総合的に問う民間資格です。気軽に受けやすく、基礎固めやスキルアップに向いています。
「まずは肉の基礎知識を身につけたい」という方に最適です。取得後はお客様への提案力もアップし、店舗での企画や販促活動にも活かせます。
取得方法
この資格を取得するためには、公式テキストを使用して独学やオンライン講習で学習します。認定試験を受験し合格すると「お肉博士」としての称号も得られます。実務経験がなくても学習と試験対策で取得可能なため、精肉業界に興味のある方や未経験から転職を考えている方にも取り組みやすい資格です。
難易度・メリット
気軽に受けやすく、精肉店・飲食店スタッフの接客対応や企画提案に活かせる点が魅力です。未経験者が基礎知識を整えるためにもおすすめの資格となっています。
肉の部位や調理法、栄養・衛生管理など、お肉全般の幅広い知識を問う民間検定で、筆記試験形式となっており、1級と2級に分かれています。お客様からの質問対応力向上や、商品知識を活かした接客にも役立つ実用的な資格です。
参考サイト:全国食肉検定委員会 お肉検定公式サイト
お肉ソムリエ(民間資格)
お肉ソムリエは、日本安全食料料理協会が認定する民間資格で、食用肉全般に関する幅広い知識を有する専門家として認められます。食用肉に関する深い知識を活かして、健康や美容面でのアドバイスも可能で、日々の食生活の質を向上させるための役割を果たします。
取得方法
この資格を取得するためには、日本安全食料料理協会主催の試験を受験する必要があります。在宅で受験可能で受験資格の制限がないため、精肉業界の経験がない方でも挑戦できます。認定講座を受講することで効率的に学習が可能であり、体系的な知識を身につけることができます。
難易度・メリット
合格基準は70%以上の評価となっており、適切な学習を行えば取得可能な難易度です。料理教室の講師、飲食店スタッフなど幅広い職業で活用可能な点が魅力です。
食用肉全般の知識、正しい処理や保存方法、衛生管理などの専門知識を証明する資格であり、お肉の調理法、銘柄や部位の特徴、栄養面での知識なども習得できます。精肉売場でのお客様への提案力向上や、商品知識を活かした接客に役立ちます。
参考サイト:日本安全食料料理協会 お肉ソムリエ資格認定試験
HACCP普及指導員(民間資格)
HACCP普及指導員は、公益社団法人日本食品衛生協会が認定する資格で、食品安全管理手法であるHACCPの普及と推進を目的に設けられています。
この資格は、中小事業者のHACCP導入を支援する専門家として活躍できるものです。食品安全管理の国際基準であるHACCPの知識を持ち、その導入や運用を支援する重要な役割を担います。
取得方法
この資格を取得するためには、日本食品衛生協会が実施する「HACCP指導者研修会」を修了する必要があります。修了後、申請手続きに基づき登録(登録には手数料が必要)することで資格を得られます。厚生労働省が定めた「HACCPに関する相当程度の知識を持つ者」を対象とした講習会となっており、専門的な知識を体系的に学ぶことができます。
難易度・メリット
難易度は中程度で、体系的な学習による効率的な取得が可能です。食品業界での信頼度向上、コンサルタントや衛生教育担当として活躍できる点が大きなメリットです。
HACCPの構築・検証を行い、導入企業をサポートするための専門知識を証明する資格として、食品安全に関わる現場での評価が高まります。特に精肉業界においても食品安全管理の重要性が高まる中、キャリアの幅を広げる貴重な資格です。
参考サイト:公益社団法人日本食品衛生協会 HACCP普及指導員
ISO22000審査員(民間資格)
SO22000審査員は、食品安全マネジメントシステム(FSMS)の国際規格ISO22000に基づき、食品安全管理体制の審査を行う専門家の資格です。
この資格は、食品業界全般で求められる国際的なスキルを証明します。国際的に認められた食品安全マネジメントシステムの専門家として、高い評価を受ける資格です。
取得方法
この資格を取得するためには、JRCA(マネジメントシステム審査員 評価登録センター)が承認する研修コースを受講し、試験に合格する必要があります。
高校卒業以上の学歴と5年以上のフードチェーン関連実務経験が必要であり、一定の専門知識と経験を前提とした上級資格です。体系的な食品安全の知識と審査技術を習得するプロセスを経ます。
難易度・メリット
国際規格に基づく高度な知識とスキルが求められるため難易度は高いですが、その分高い評価を受けることができます。大手企業や輸出関連業務での評価が向上し、審査員として独立開業も可能です。
ISO22000規格に基づく食品安全管理体制の審査・監査を行うための資格として、主に食品製造業や輸出関連企業で活躍できます。グローバル化が進む食品業界において、国際水準の食品安全の専門家としてのキャリアを築くことができます。
参考サイト:一般財団法人 日本規格協会 食品安全マネジメントシステム審査員
まとめ
精肉業界は、食品に関する専門知識・加工技術・衛生管理など、幅広いスキルを必要とする分野です。資格を取得することは、未経験者が基礎知識を身につける第一歩としても、現場経験者がさらにキャリアアップするための手段としても非常に有効です。
精肉業界に興味がある方や、すでに働いていてさらなる成長を目指す方は、ぜひ資格取得を検討してみましょう。
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