私たちの食卓に並ぶ青果は、農家から直接届くのではなく、途中で「卸売」という仕組みを経ています。
卸売とは、産地で集められた野菜や果物を卸売市場に集め、大卸や仲卸を通じて小売店や外食産業に流す仕組みのことです。
では、卸売とは具体的にどのような仕組みで、どのような仕事が行われているのでしょうか。
本記事では、卸売の基礎を整理し、大卸と仲卸それぞれの役割や仕事内容、一日の流れや収入・働き方の実情までをわかりやすく紹介します。
青果の「卸売」とは? 流通のしくみをおさらい

青果が産地から食卓へ届くまでには、必ずといっていいほど「卸売(おろしうり)」という仕組みが関わっています。まずは「卸売とは何か?」という基本を押さえ、大卸と仲卸という二つの存在へと話を進めていきましょう。
「卸売」とは、生産者から大量に仕入れて小売へ分配するしくみ
卸売とは、生産者から集められた青果を一度まとめ、整理・調整したうえで小売や外食に供給する仕組みを指します。
日本の青果流通の大枠は、次のような流れです。
生産者 → JA・産地市場 → 卸売市場 → 小売・外食→ 消費者
このしくみによって、産地ごとにバラバラに出荷される青果が集約され、安定した供給と公正な価格形成が実現しています。実際、日本で流通する青果の約8割が卸売市場を通過しており、ここで価格の基準や取引ルールが形づくられています。
一方で、すべてが市場を通るわけではありません。残りの約2割は「市場外流通」と呼ばれ、以下のような形で取引されます。
- 産直ルート:農家がスーパーや飲食店と直接契約して販売
- 契約取引:量販チェーンなどが特定の生産者や産地と結び、安定供給を確保
- 直売所・道の駅:地域の消費者に直接販売する小規模な流通
このように卸売というシステムは、産地から集まった青果を集約・整理し、規格や品質を整えたうえで取引を行う役割を持っています。
さらに、市場内の取引を通じて需給に応じた価格を形成し、流通量やルートを調整することで、全国の小売や外食産業へ安定的に供給できる体制を支えています。
📌 用語解説:卸売と卸売市場
- 卸売:生産者から集めた青果をまとめ、取引を通じて価格を決め、小売や外食に供給する「機能」のこと。
- 卸売市場:その卸売が実際に行われる場所。中央卸売市場・地方卸売市場があり、大卸や仲卸が活動している。
卸売市場の仕組みを支える「大卸」と「仲卸」
卸売市場の内部には、大きく分けて「大卸」と「仲卸」という二つの代表的な業者があります。
- 大卸(おおおろし)
全国から青果を集め、入荷した商品をセリや相対取引を通じて販売する役割を担います。市場における価格の基準をつくる存在であり、取引のスタート地点です。 - 仲卸(なかおろし)
大卸から仕入れた商品を小売店や飲食店に合わせて小分け・加工し、実際の販売現場へと橋渡しをします。売り場のニーズを把握して細やかに対応するのが特徴です。
こうした分業によって、卸売市場は「大量に集める力」と「きめ細かく分ける力」を両立させています。
もし市場が存在しなければ、生産者が全国の小売・外食に直接対応する必要があり、流通は混乱を招いてしまうでしょう。
「大卸」とは? 集荷から価格決定までの仕事

では、ここからは大卸と仲卸のそれぞれの役割を詳しく見ていきましょう。
まずは大卸です。大卸は株式会社として運営されることが多く、生産者や出荷団体から託された青果物を受け取り、仲卸業者に販売する仲介会社の役割を担っています。
主な業務は、出荷団体との契約や集荷調整、入荷後の検品・仕分け、セリ・相対による販売と精算です。では、仕事内容を順に見ていきましょう。
出荷団体から青果物を受け取る
大卸の仕事は、まず産地の出荷団体や農協から青果を委託して受けるところから始まります。
ここで取り決められるのは「どの品目を・どのくらいの数量を・いつの時期に出荷するか」といった出荷計画です。
大卸は商品を買い取るのではなく、あくまで「委託を受けて市場で販売する」立場であることが大きな特徴です。
もっとも、青果は天候や災害の影響を強く受けるため、計画どおりに収穫できないことも少なくありません。そのため、大卸は産地から逐一送られてくる収穫状況をもとに、入荷量を柔軟に調整しています。
- 出荷団体との打ち合わせ・連絡:当日の収穫状況や翌日の出荷量を確認する
- 需要とのすり合わせ:繁忙期や天候不順時には、市場の動きを見ながら数量を調整
- 物流手配:トラック便や配送スケジュールを組み、市場に滞りなく到着するよう調整
- 複数産地からの確保:一方の産地が不作のときは、他の地域から集荷して安定供給を図る
💡 もし、商品が売れ残ったら?
大卸は生産者や出荷団体から商品を 委託 されて販売する立場です。つまり、大卸が「買い取って在庫を抱える」わけではありません。では、売れ残った青果はどうなるのでしょうか?
- 値下げして再販売
→ その日のうちに売り切る努力をする - 返品・廃棄
→ 最終的な損失は、出荷者(生産者やJA)側に帰属
このように、大卸にとって重要なのは「なるべく高く、確実に売り切ること」。
販売結果はすべて出荷者に報告され、手数料を差し引いた金額が精算されます。
青果物の検品・仕分けと販売準備
市場に到着した青果は、そのまま販売に回されるのではなく、まず大卸によって検品が行われます。
鮮度・形・色合い・傷の有無などを確認し、規格に基づいて等級をつける工程です。この作業によって「市場に出せる商品」と「加工用や規格外に回す商品」とを分け、品質を保証します。
検品を終えた青果は、販売に向けた仕分け・準備作業に移ります。具体的には次のような工程があります。
- 産地ごと・サイズごとにまとめ直す
- 箱詰めや袋詰め、ラベル貼りなどを行う
- 冷蔵庫や冷蔵ケースに保管し、温度管理を徹底する
これらの作業は、出荷者から託された青果を「売れる状態」に整えるために欠かせません。とくに青果は鮮度が命であり、少しの温度変化や取り扱いの粗さで価値が下がるため、細心の注意が払われています。
こうして準備を終えた青果は、翌朝のセリや相対取引に並べられます。ここで大卸は仲卸や買参人に販売を行い、取引価格が確定します。
※ 買参人=スーパーや外食チェーンなど、大卸から直接買い付けできる登録業者。
セリ・相対取引の実施と精算業務
準備を終えた青果は、翌朝の市場で仲卸や買参人に販売されます。
その際、大卸が用いる販売方法にはセリ取引と相対取引の二種類があり、商品や状況に応じて大卸が使い分けています。
- セリ取引
複数の買い手が公開形式で競り合い、最も高値をつけた業者が購入する方式です。需要と供給をそのまま反映できるため、公平性の高い取引方法とされています。 - 相対取引
大卸と買い手が1対1で数量や価格を取り決める方式です。取引先との信頼関係を基盤に、安定的な取引を行う際に用いられます。
たとえば「数量が少なく人気の品目はセリで競り上がる」「常連の取引先にまとまった数量を渡す場合は相対で条件を決める」といった具合です。
さらに大卸は、過去の入荷量や価格データを参考に販売計画を調整し、「今日はセリで強気に出るべきか」「相対で早めにまとめるべきか」といった判断を行っています。
販売が終わると、精算業務に移ります。販売結果はすべて記録され、出荷者に報告。売上から卸売手数料を差し引いた金額が精算されます。
大卸は在庫リスクを負わない立場ですが、公正かつ迅速に売り切る責任を担っており、その成果が出荷者からの信頼につながっているのです。
仲卸とは? 仕入れから納品までの仕事

つづいて、仲卸について見てみましょう。仲卸は、市場で大卸から仕入れた青果を小売店や飲食店などの得意先へ届ける役割を担っています。
大卸が「市場全体の基盤をつくる存在」だとすれば、仲卸は「現場のニーズに即応する存在」。仕入れから小分け、包装、納品に至るまで、細かな調整を重ねながら毎日の流通を支えています。
商品の目利きと仕入れ
仲卸の仕事はまず、商品を見極める力=目利きから始まります。早朝の市場で大卸のセリや相対取引に参加し、どの青果をどのくらい仕入れるかを瞬時に判断します。
具体的には、
- 得意先からの注文内容(数量・品目・希望価格帯)をもとに優先順位を決める
- 実際に商品を手に取り、鮮度・色・形・香りなどを確認する
- 需要動向やトレンドを踏まえて、必要以上に在庫を抱えないよう調整する
といった作業を行います。
ここでの判断次第で、その日の販売がスムーズにいくかどうかが決まるため、経験と直感の両方が求められる場面です。
小分け・包装・顧客対応
仲卸の重要な役割のひとつが、仕入れた青果を「売れる状態」に整えることです。
大卸から仕入れた商品は、そのままでは小売や飲食店の現場で扱いにくいため、仲卸が小分けや包装を行います。
具体的な作業には、次のようなものがあります。
- サイズや等級ごとに仕分ける
- スーパー向けに袋詰めやパック詰めを行う
- 飲食店向けに必要量だけをまとめて用意する
- ラベルや値札を貼り、すぐに陳列や調理に使える形にする
こうした加工的な作業によって、得意先は手間をかけずに商品を扱えるようになります。
さらに仲卸は、顧客とのやり取りを通じて細やかな対応も求められます。
「今日は小ぶりなサイズを中心に欲しい」「なるべく傷の少ないものを優先して」など、日々のリクエストに応えることで信頼関係を築いていきます。現場での柔軟さこそが仲卸の強みであり、長期的な取引につながるポイントです。
配送・納品と在庫管理
小分けや包装を終えた商品は、すぐに配送・納品へと回されます。仲卸にとって午前中は時間との勝負であり、スケジュール管理が非常に重要です。
- 配送・納品
トラックに積み込み、決められた時間までに小売店や飲食店へ届けます。納品先では商品状態をその場で確認してもらい、不具合があれば即対応します。配送の遅延は売り場や厨房に直結するため、迅速さと正確さが欠かせません。 - 在庫管理
納品後はその日の在庫状況を確認し、次の仕入れ計画に反映します。需要が急に高まった場合には追加仕入れが必要になることも多く、天候やイベントによる変動にも即応できる柔軟さが求められます。 - 事務作業
納品伝票や精算に関わる事務処理もこの時間帯に行います。現場での作業と並行して、数字を正確にまとめる力も必要です。
仲卸の仕事は、仕入れから納品まで一方向に進むだけではなく、顧客の要望や市場の動きに合わせて 仕入れ・小分け・納品を何度も調整するサイクル で成り立っています。こうしたフットワークの軽さこそ、仲卸が市場で果たす大きな役割なのです。
Q&Aで解説! 青果卸売の働き方・収入・やりがいとは?

ここまで、大卸と仲卸の役割や具体的な仕事の流れを見てきました。しかし「実際に働くとなるとどんな生活になるの?」「やりがいはあるの?」「収入は?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。
ここからは、青果卸売の仕事についてよくある質問をまとめ、現場の実情をQ&A形式で紹介します。
まとめ
青果の卸売は、全国から集まった野菜や果物を整理し、小売や外食に届けるまでの大切なプロセスです。市場全体の基盤をつくる大卸と、現場のニーズに応える仲卸。二つの存在が役割を分担することで、私たちの食卓に安定して青果が届いています。
本記事では、卸売の基本的な仕組みから、大卸・仲卸それぞれの仕事の流れ、さらに働き方や収入、やりがいといったリアルな疑問まで紹介しました。
青果流通は日々変化があり、スピード感と柔軟さが求められる現場です。その一方で「市場の中心で動いている実感がある」「午後の時間を有効に使える」といったやりがいも少なくありません。
卸売の仕事に興味を持った方は、ぜひ市場の現場に目を向けてみてください。大卸・仲卸それぞれの役割を知ることで、日々手にする青果がどのように届いているのか、より身近に感じられるはずです。
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