中食業界とは?主要企業から転職情報まで業界構造を徹底解説

中食業界とは?主要企業から転職情報まで業界構造を徹底解説
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この記事の監修

監修者のアバター       葛川英雄      

水産市場の競り人、生鮮食品業界、人材業界で培った豊富な経験を持つ食のプロフェッショナル。現在は株式会社オイシルの代表取締役として、10年以上の業界経験を活かし、生鮮業界やスーパーマーケット業界の発展に貢献しています。

近年、コンビニ弁当やスーパーの惣菜、持ち帰り専門店など、調理済み食品を扱う「中食業界」が急速に成長しています。中食市場規模は2024年に22.13兆円(外食・中食合計)に達し、過去最高を記録するなど、現代の食生活を支える重要な産業として注目を集めています。

しかし、「中食業界で働きたい」「業界研究をしたい」と考えても、どんな企業があり、どのような仕事があるのか、具体的な情報を得るのは意外と困難です。スーパーマーケットや食品業界で働く方の中にも、中食業界への転職を検討している方は少なくないでしょう。

本記事では、中食業界の構造から主要企業の戦略、働く環境、転職情報まで、業界の全貌を詳しく解説します。中食業界への理解を深め、キャリア選択の参考にしていただければと思います。

目次

中食業界の基本構造とビジネスモデル

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中食業界の定義と範囲

中食業界とは、調理済みの弁当や惣菜などを製造・販売する産業全体を指します。家庭で素材から調理する「内食」と、店舗で食事する「外食」の中間に位置することから「中食」と呼ばれ、その市場を支える企業群が中食業界を形成しています。

この業界の特徴は、製造から販売まで多様な事業形態が存在することです。工場で大量生産して小売店に供給する弁当・惣菜製造業から、店舗で調理・販売を行う持ち帰り弁当専門店、デパ地下や駅ビルでの対面販売を行う惣菜専門店まで、それぞれ異なるビジネスモデルを展開しています。さらに近年では、コンビニやスーパーが自社ブランドの中食商品を企画・調達する動きも活発化しており、業界の境界線は曖昧になりつつあります。

業界の市場規模と成長性

中食業界の成長性を語る上で欠かせないのが、その圧倒的な市場規模です。サカーナ・ジャパン株式会社の調査によると、2024年の外食・中食市場規模は22.13兆円となり、前年同期比4.2%増、コロナ前の2019年比でも5.0%増の見込みで、調査開始の2014年以降で最高規模となっています。

(出典:「<外食・中食 調査レポート>2024年の外食・中食市場規模は22.13兆円の見込み 成長率は前年比4.2%増、過去最高を記録」https://www.npdjapan.com/press-releases/pr_20250115/)

この数字が示すのは、中食業界が単なる一時的なブームではなく、構造的な社会変化に支えられた持続的成長産業であるということです。共働き世帯の増加、単身世帯の拡大、高齢化の進展など、現代日本の社会構造そのものが中食需要を押し上げており、今後も安定した成長が期待できる分野といえるでしょう。

業界のサプライチェーン構造

中食業界は複雑なサプライチェーンで成り立っています。原材料調達から製造・加工、そして販売チャネルまで、それぞれの段階で専門性の高い企業が参入しており、全体として効率的なシステムを構築しています。

特に注目すべきは販売チャネルの多様性です:

  • コンビニエンスストア:約31%のシェア
  • 食品スーパー:約29%のシェア
  • 惣菜専門店:約27%のシェア
  • 百貨店:約3%のシェア

(出典:一般社団法人日本惣菜協会データより、「中食業界 – 山田コンサルティンググループ」https://www.ycg-advisory.jp/industry/food/lunch/)

この構造により、消費者は様々な場面で中食商品にアクセスできる環境が整っています。この多チャネル展開こそが中食業界の強さの源泉であり、単一の販売ルートに依存しないリスク分散効果も生んでいます。

中食業界の主要企業と競争構造

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業界売上高ランキングと各社の特徴

中食業界の勢力図を理解するには、主要企業の売上高ランキングを見るのが最も分かりやすいでしょう。2022-2023年の業界ランキングは以下の通りです。

(出典:「中食業界の動向や現状、ランキングなど」https://gyokai-search.com/3-naka.html)

1位:プレナス

3
  • 主力ブランド:ほっともっと、やよい軒
  • 事業内容:持ち帰り弁当チェーン、定食チェーン運営

2位:カネ美食品

4
  • 主力取引先:ファミリーマート
  • 事業内容:コンビニ弁当・惣菜の製造

3位:ロック・フィールド

5
  • 主力ブランド:RF1(アールエフワン)
  • 事業内容:デパ地下・駅ビル惣菜専門店

4位:オリジン東秀

6
  • 主力ブランド:オリジン弁当
  • 事業内容:持ち帰り弁当チェーン

5位:ハークスレイ

7
  • 主力ブランド:ほっかほっか亭
  • 事業内容:持ち帰り弁当チェーン

このランキングからは、業界の多様性がよく見て取れます。首位のプレナスは「ほっともっと」「やよい軒」という消費者に身近なブランドを展開し、約3,000店舗、年間売上高1,500億円、年間3億食という圧倒的な規模を誇ります。

一方で2位のカネ美食品はファミリーマートとの密接な関係を活かしたBtoB型のビジネスモデル、3位のロック・フィールドは「RF1」ブランドでデパ地下市場を開拓するなど、それぞれが独自のポジションを築いています。

この多様性こそが中食業界の健全さを示しており、単一企業による寡占ではなく、複数の企業が切磋琢磨することで業界全体の成長を支えている構造が見えてきます。

プレナスの圧倒的な存在感

業界最大手のプレナスは、その成長戦略において特筆すべき企業です。2008年に「ほっかほっか亭」から「ほっともっと」への大胆なブランド転換を実行し、独自路線で事業を拡大してきました。この決断は業界内でも大きな話題となりましたが、結果的に同社の競争優位性を確立する重要な転換点となりました。

最近では若年層やファミリー層を対象とした新規顧客開拓に注力し、最新のスチームオーブン調理機を使用した新ブランド「ほっともっとグリル」も展開しています。2023年2月にはMBO(経営陣買収)により株式非上場化を実施し、より機動的な経営体制を構築している点も注目されます。

プレナスの戦略は、単なる規模拡大ではなく品質向上と差別化に重点を置いており、業界全体の方向性を示すベンチマークとしての役割も果たしています。

競争激化の背景と各社の対応

中食業界の競争は年々激しくなっています。専門企業同士の競争に加えて、コンビニやスーパーが中食需要の取り込みを強化しており、品揃えの充実や独自商品の開発に力を入れているためです。

この状況に対して各社は独自の対応策を打ち出しています。オリジン東秀は「オリジン弁当」から惣菜やサラダを強化した「キッチンオリジン」へのモデルチェンジを進め、健康志向の高まりに対応しようとしています。また、グループのスーパー内で展開する「オリジンデリカ」では首都圏以外の地域への展開を進めるなど、地理的な拡大も図っています。

こうした各社の取り組みは、単なる価格競争ではなく、付加価値の創出による差別化競争へと業界を導いており、消費者にとってもより魅力的な商品やサービスの提供につながっています。

中食業界で働くということ

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多彩な職種と専門性

中食業界の魅力の一つは、働く人にとって多様なキャリアパスが用意されていることです。製造から販売まで幅広い業務があるため、自分の興味や適性に応じて様々な職種を選択できます。

商品開発・企画の分野では、企業戦略やコストを考慮しながら、顧客ニーズや流行を捉えたアイデアを創出する創造性が求められます。これは単なる料理の知識だけでなく、マーケティング感覚や消費者心理の理解も必要な、高度に専門的な仕事です。

生産管理・製造技術の分野では、原料から製品までの工程設計を行い、変化する生産技術を駆使して効率的な製造システムを構築します。食品安全や品質管理への要求が高まる中、この分野の専門家の価値はますます高まっています。

営業・販売の分野では、店頭販売から企業向けの提案営業まで幅広い業務があり、お客様の声を直接聞ける貴重な機会も多く、やりがいを感じられる職種として人気があります。

転職市場での高い需要

中食業界の転職市場を見ると、特にスーパーマーケットや食品業界経験者に対する強い需要があることが分かります。実際の求人では、「中食やスーパーマーケット等での小売店舗でのマネジメント経験がある方」や「食品業界(飲食業界)でのマネジメント経験(店長や責任者)をお持ちの方」といった条件が多く見られます。

(出典:「中食に関する転職・求人情報|転職エージェントならリクルートエージェント」https://www.r-agent.com/keywords/t/%E4%B8%AD%E9%A3%9F/)

これは、以下のような経験が中食業界で高く評価されることを示しています:

  • 惣菜部門での勤務経験
  • 食品の品質管理・安全管理経験
  • 店舗運営・マネジメント経験
  • 商品企画・開発経験

特にスーパーの惣菜部門経験者は、消費者ニーズの理解と現場オペレーションの両方を熟知しているため、企業側からの評価は非常に高いのが実情です。

キャリア形成の可能性

中食業界でのキャリア形成には、他の業界にはない独特の魅力があります。食品という生活に密着した商品を扱うため、自分の仕事が直接消費者の満足につながることを実感できます。また、フランチャイズビジネスが盛んな業界でもあるため、将来的な独立開業の可能性も開かれています。

店舗運営経験やスタッフ管理経験は、中食業界でのキャリアアップに直結します。多店舗展開のノウハウを身につけることで、エリアマネージャーや本部スタッフへの道も開けてきます。特にフランチャイズビジネスにおいては、現場を知る人材の価値は計り知れません。

中食業界が抱える課題と将来への取り組み

人手不足という構造的課題

中食業界が直面している最も深刻な課題の一つが人手不足です。関連する飲食業界のデータを見ると、その深刻さがよく分かります。飲食店では非正社員の人手不足に悩む企業の割合が67%に達しており、他業種と比較しても極めて高い水準となっています。

(出典:「飲食店の​人手不足、原因と解消の​ための​解決策を​紹介」https://squareup.com/jp/ja/townsquare/restaurant-labor-shortage)

この人手不足は単なる一時的な現象ではなく、少子高齢化や働き方に対する価値観の変化など、社会構造の変化に根ざした構造的な問題です。そのため、業界全体として抜本的な対策を講じる必要があり、各企業も様々な取り組みを進めています。

ただし、最近のデータでは改善の兆しも見られます。飲食店の非正社員の人手不足割合は74.8%と依然として高水準ではあるものの、前年同月から10.4ポイント低下しており、業界の努力が実を結び始めていることも確かです。

(出典:「飲食店が人手不足になる理由とは?7つの原因ともたらす影響や解決策を解説」https://www.neo-career.co.jp/humanresource/knowhow/b-contents-parttime-insyokuhitodebusoku-190213/)

原材料費高騰への戦略的対応

もう一つの大きな課題が原材料費の高騰です。これは中食業界に限らず食品業界全体が直面している問題ですが、比較的薄利多売の傾向がある中食業界にとってはより深刻な影響を与えています。

しかし、この課題に対して業界各社は戦略的に対応しています。単純な値上げではなく、商品の付加価値向上や効率化による対応が主流となっており、消費者にとってもより魅力的な商品の提供につながっています。例えば、健康志向の高まりに対応した素材にこだわった商品や、低カロリー・低糖質・無添加といった付加価値商品の開発が活発化しています。

技術革新による課題解決

人手不足や効率化の課題に対して、業界では積極的に技術革新を取り入れています。

  • 自動調理システム:セントラルキッチンでの導入が進む
  • AI需要予測:食材ロス削減と効率的な生産計画
  • 配送効率化システム:物流コストの削減と配送時間短縮
  • デジタルマーケティング:顧客データ活用とパーソナライゼーション

これらの技術革新は単なるコスト削減にとどまらず、品質の安定化や食品安全の向上にも寄与しており、業界全体の競争力強化につながっています。

転職を検討する方への実践的アドバイス

未経験者にも開かれた門戸

中食業界は未経験者にも比較的参入しやすい業界です。大手チェーンでは体系的な研修プログラムを用意しており、フランチャイズ制度を活用した独立開業のサポート体制も整っています。また、営業、管理、製造など様々な分野での採用を行っているため、自分の適性に合った職種を見つけやすいのも魅力です。

未経験者が成功するポイントは、業界の特性を理解し、自分の強みをどう活かせるかを明確にすることです。例えば、接客経験があれば店舗運営で活かせますし、製造業経験があれば生産管理で重宝されるでしょう。

スーパー・食品業界経験者の圧倒的優位性

前述の求人情報からも明らかなように、スーパーマーケットや食品業界での経験は中食業界で極めて高く評価されます。特に重宝される経験として、惣菜部門での勤務経験、食品の品質管理・安全管理経験、店舗運営・マネジメント経験、商品企画・開発経験などが挙げられます。

これらの経験を持つ方は、転職市場において非常に有利なポジションにあります。中食業界の企業側も、こうした経験者を積極的に採用したいと考えており、好条件での転職も期待できるでしょう。

成長企業を見極めるポイント

中食業界で転職を成功させるには、将来性のある企業を選ぶことが重要です。その見極めポイントとして以下が挙げられます:

  • 市場シェアの拡大:業界ランキングで上昇傾向にある企業
  • 新規出店への積極性:店舗数拡大を継続している企業
  • 技術革新への投資:自動化やDXに積極的な企業
  • ブランド力の強化:消費者認知度向上に取り組む企業

また、業界ランキングで上昇傾向にある企業や、新規出店を積極的に行っている企業は成長性があります。自動化やDXに積極的に投資している企業は将来性が期待でき、消費者認知度が高くブランド価値向上に取り組んでいる企業は安定性があると判断できるでしょう。

中食業界の将来展望

持続的成長を支える構造的要因

中食業界の将来性を考える上で重要なのは、その成長が一時的なブームではなく、構造的な社会変化に支えられているということです。1人当たりの中食の消費が2014年から2019年にかけて約72,800円から81,796円と10%以上増加しており、生活スタイルの変化に伴う継続的な需要拡大が確認されています。

(出典:「中食業界 – 山田コンサルティンググループ」https://www.ycg-advisory.jp/industry/food/lunch/)

この背景には、共働き世帯の増加、単身世帯の拡大、高齢化の進展など、日本社会の構造的変化があります。これらの要因は短期的に変化するものではなく、今後も中食需要を押し上げ続けると予想されます。

技術革新がもたらす新たな可能性

業界では現在、様々な技術革新が進んでいます。自動調理システムの導入、AI需要予測による食材ロス削減、配送効率化システム、デジタルマーケティングの活用など、これらの技術は業界の生産性向上と競争力強化に大きく貢献しています。

特に注目すべきは、これらの技術革新が単なる効率化にとどまらず、新たなビジネスモデルの創出や顧客体験の向上にもつながっていることです。例えば、スマートフォンアプリを活用した注文システムや、パーソナライゼーションされた商品提案など、従来では考えられなかったサービスが実現されています。

多様化する消費者ニーズへの対応

現代の消費者ニーズは極めて多様化しており、中食業界もそれに対応した商品開発を進めています。健康志向の高まりに対応した素材にこだわった商品、低カロリー・低糖質・無添加といった機能性商品、さらには個食やシニア向けの商品開発など、きめ細かなセグメンテーションが進んでいます。

また、環境への配慮やサステナビリティへの関心も高まっており、包装資材の見直しや食材ロス削減への取り組みなど、社会的責任を果たす企業姿勢も求められています。これらのニーズに応えることで、業界はさらなる成長機会を見出すことができるでしょう。

まとめ

中食業界は現代の食生活を支える重要な産業として、継続的な成長を続けています。市場規模の拡大、技術革新の進展、多様化する消費者ニーズへの対応など、業界には数多くの機会が存在しています。

特にスーパーマーケットや食品業界で経験を積んだ方にとって、中食業界は自身のスキルを最大限に活かせる魅力的な転職先です。惣菜部門での実務経験、食品安全管理の知識、店舗運営のノウハウなどは、中食業界で極めて高く評価される貴重な資産といえるでしょう。

人手不足や原材料費高騰などの課題はあるものの、これらは技術革新や効率化により着実に解決の方向に向かっています。業界全体として持続可能な成長を目指した取り組みが進んでおり、働く人にとっても魅力的な職場環境の整備が進んでいます。

中食業界への転職や業界研究を検討されている方は、各企業の事業戦略や成長性を詳しく調べ、自身のキャリア目標と照らし合わせて判断することをお勧めします。現代の食生活に欠かせない中食業界で、あなたの経験とスキルを活かし、新たなキャリアを築いてみてはいかがでしょうか。

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