コンビニ弁当、スーパーの惣菜、デリバリーサービス…これらすべてが「中食(なかしょく)」と呼ばれる巨大な市場を形成していることをご存知でしょうか。実は中食市場は、私たちが想像する以上に大きな経済規模を持ち、年々成長を続けている注目の分野なのです。
2024年の最新データによると、外食・中食を合わせた市場規模はなんと22.13兆円に達し、過去最高を記録しました。これは日本のGDPの約4%に相当する巨大な市場です。一体なぜ、中食市場はこれほどまでに成長を続けているのでしょうか。
本記事では、最新の市場データを基に、中食市場の実態と成長要因を分かりやすく解説します。普段何気なく利用している中食サービスの背景にある、大きな社会の変化と市場の動きを理解していただければと思います。
※中食の基本的な定義や種類については「中食とは?忙しい現代人の味方」の記事で詳しく解説しています。
中食市場の驚くべき規模

2024年最新データ:過去最高の22.13兆円
サカーナ・ジャパン株式会社が2025年1月に発表した最新レポートによると、2024年の外食・中食市場規模は22.13兆円となり、前年同期比4.2%増、コロナ前の2019年比でも5.0%増の見込みで、調査開始の2014年以降で最高規模を記録しました。
(出典:「<外食・中食 調査レポート>2024年の外食・中食市場規模は22.13兆円の見込み 成長率は前年比4.2%増、過去最高を記録」https://www.npdjapan.com/press-releases/pr_20250115/)
この22.13兆円という数字がどれほど大きいかピンと来ないかもしれませんが、参考までに比較すると、日本の自動車産業の市場規模が約60兆円程度ですから、その3分の1を超える規模ということになります。私たちの日常的な食事が、これほど大きな経済活動を支えているのです。
中食単独市場の成長軌跡
中食市場単独で見ると、さらに興味深いデータが浮かび上がります。一般社団法人日本惣菜協会の「惣菜白書2022」によると、2021年の中食市場規模は10兆1,149億円となりました。新型コロナウイルス感染症の影響を受けて2020年は9兆8,195億円まで落ち込みましたが、その後は順調に回復しています。
(出典:「コロナ禍における中食マーケットの変化と課題」https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/wadai/2209_wadai1.html)
長期的な成長トレンドを見ると、2002年の市場規模は6兆8,560億円でした。つまり、この20年間で中食市場は約1.5倍に成長したことになります。これは年平均成長率で約2%という、安定した成長を続けていることを意味します。
他の調査機関のデータ
矢野経済研究所が2024年に発表した調査では、2023年度における日配惣菜・米飯市場は小売金額ベースで9兆9,400億円(前年度比102.5%)、加工惣菜・米飯市場は1兆1,594億円(前年度比102.7%)と予測されています。
(出典:「惣菜(中食)・米飯市場に関する調査を実施(2024年)」https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3519)
複数の調査機関のデータを総合すると、中食市場は10~12兆円規模で推移し、継続的な成長を続けていることが確認できます。
中食市場が成長し続ける4つの理由

1. 単身世帯の急増という社会構造の変化
中食市場成長の最大の要因は、日本の家族構成の変化です。現在、全世帯の3分の1が単身世帯となっており、総務省統計局の予測では、2040年には単身世帯の割合が全体の40%程度にまで増加するとされています。
(出典:「コロナ禍における中食マーケットの変化と課題」https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/wadai/2209_wadai1.html)
単身世帯では、食材を買っても消費しきれない場合が多く、結果として調理済みの中食商品への需要が高まります。「野菜を1個買っても使い切れない」「肉や魚も少量パックがない」といった悩みを持つ一人暮らしの方は多いでしょう。そんな時、必要な分だけ購入できる中食は非常に合理的な選択となるのです。
2. 共働き世帯の拡大とライフスタイルの変化
1980年代に一般的だった専業主婦世帯は徐々に減少し、90年代後半を境に共働き世帯と世帯数が逆転しました。現在では専業主婦世帯数は共働き世帯数の半分以下にまで低下しています(出典:同上)。
共働き世帯では、どうしても料理にかけられる時間が限られます。仕事から帰ってきて疲れている時に、「今日は中食で済ませよう」という選択が自然になります。これは決して手抜きではなく、限られた時間を有効活用するための賢い選択として、多くの家庭で受け入れられています。
3. 高齢化と食生活の合理化
日本は2010年頃を境に人口減少に転じ、高齢者の割合は25%を超える超高齢化社会に突入しています。2030年頃には高齢者の割合が30%を超えるとの予測も出ており、さらなる高齢化は避けられません(出典:同上)。
高齢になると食べる量が減り、家庭内廃棄を避けて経済的な合理化を求める傾向が強まります。また、調理の手間を省きたいというニーズも高まります。このため、少量でも品数や味、見た目にこだわった高品質な中食商品への需要が増加しているのです。
4. 1人当たり消費額の継続的な増加
山田コンサルティンググループの分析によると、国内の人口が減少する一方で、1人当たりの中食の消費が2014年から2019年にかけて約72,800円から81,796円と10%以上増加しており、生活スタイルの変化に伴う1人当たりの消費量の増加や、消費者ニーズの多様化による単価の上昇が背景にあります。
(出典:「中食業界 – 山田コンサルティンググループ」https://www.ycg-advisory.jp/industry/food/lunch/)
これは非常に興味深いデータです。人口が減っているにも関わらず市場規模が拡大しているということは、一人ひとりがより多くの中食商品を利用し、より高品質な商品にお金を使っているということを意味します。
セグメント別に見る市場の詳細

日配惣菜・米飯市場:9兆9,400億円の巨大市場
中食市場の中核を占めるのが、日配惣菜・米飯市場です。これは外食と内食の中間に位置する調理済み持ち帰り食品で、和風惣菜、洋風惣菜、中華惣菜、米飯(弁当など)、給食弁当、調理パン、ファストフード、調理麺など、日持ちがせず購入当日から数日の間に消費する調理済み食品を対象としています。
矢野経済研究所の調査によると、2023年度のこの市場は9兆9,400億円(前年度比102.5%)となっており、中食市場全体の約9割を占める巨大なセグメントです。
(出典:「惣菜(中食)・米飯市場に関する調査を実施(2024年)」https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3519)
加工惣菜・米飯市場:成長率で上回る1兆1,594億円
一方、比較的保存性の高い、パウチ惣菜、冷凍弁当・惣菜、無菌包装米飯、冷凍米飯、レトルト米飯などを対象とする加工惣菜・米飯市場は、2023年度に1兆1,594億円(前年度比102.7%)となりました(出典:同上)。
規模は日配市場より小さいものの、成長率では上回っており、保存技術の向上や在宅勤務の普及などを背景に、今後も拡大が期待される分野です。
コロナ禍で明暗が分かれたカテゴリー
コロナ禍における市場の変化を詳しく見ると、カテゴリーによって明暗が分かれました。特に調理麺、袋物惣菜の売上が好調だった一方、市場の大部分を占める米飯類、一般惣菜は、コロナ前の2019年と比較すると市場規模が完全には戻っていない状況です。
(出典:「コロナ禍における中食マーケットの変化と課題」https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/wadai/2209_wadai1.html)
これは、在宅勤務の普及により昼食需要が変化したことや、外出機会の減少により弁当需要が減った一方で、家庭での食事機会が増え、調理の手間を省ける商品への需要が高まったことを反映していると考えられます。
デリバリー市場の急拡大と新たな競争環境

ウーバーイーツが変えた市場構造
近年の中食市場を語る上で欠かせないのが、デリバリーサービスの急拡大です。業界動向サーチの分析によると、スマホやネットで出前のオーダーができる『出前館』や『ウーバーイーツ』の存在が大きくなっており、特に『ウーバーイーツ』では宅配の人員を確保する必要がないことから、大手企業のみならず個人店も市場に参入しており、市場全体のパイは増加傾向にあります。
(出典:「中食業界の動向や現状、ランキングなど」https://gyokai-search.com/3-naka.html)
2020年のフードデリバリー市場規模は、なんと前年比50%増の6,264億円に達しました。
(出典:「<外食・中食 調査レポート>2020年計の市場動向、外食・中食売上は18.3%減 出前市場規模は50%増の6264億円」https://www.npdjapan.com/press-releases/pr_20210209/)
これは、コロナ禍で外出が制限される中、自宅で専門店の味を楽しみたいという消費者ニーズが急激に高まったことを示しています。
競争環境の変化
新型コロナウイルスの影響で、自宅で食事をする機会が増え宅配を利用する消費者も増加しました。コロナの影響で客足が減った飲食店も新たに宅配を始めるなど、図らずとも新型コロナが宅配市場を広めるきっかけとなりました。
現在の中食業界は外食、スーパーやコンビニと競争が激しくなっており、さらにネットオーダー系のデリバリーも加わり、群雄割拠の様相を呈しています。しかし、これは消費者にとっては選択肢が増え、より良いサービスを受けられるという利点があります。
価格上昇と市場成長の関係

インフレが押し上げる市場規模
2024年の市場規模が過去最高を記録した背景には、インフレ・値上げの影響があります。サカーナ・ジャパンのフードサービスディレクターは、「過去最高規模を記録する見込みの、外食・中食市場規模ですが、インフレ・値上げの影響により、1人当たりの客単価が大きく上昇したことが寄与しています。コロナ前の2019年と比べると客単価は10%以上上昇しています」と分析しています。
(出典:「<外食・中食 調査レポート>2024年の外食・中食市場規模は22.13兆円の見込み 成長率は前年比4.2%増、過去最高を記録」https://www.npdjapan.com/press-releases/pr_20250115/)
一方で、食機会数(客数)はコロナ前比で約6%減と、まだ以前の水準には達していません。しかし、人口減少も進行している中で6%減まで戻っているのは、消費者の外食・中食需要が以前より高まっていると言えます。
2023年の値上げ影響
2023年の市場動向を見ると、外食・中食市場の売上は前年比13%増となりましたが、これは値上げの影響で客単価が8%増と大きく上昇したことが主な要因でした。食機会数(客数)の増加は4%にとどまっており、価格上昇による市場規模拡大が顕著に現れています。
(出典:「<外食・中食 調査レポート>2023年計、外食・中食の売上、前年比13%増、値上げの影響で客単価8%増」https://www.npdjapan.com/press-releases/pr_20240206/)
地域別市場動向

東名阪エリアの詳細分析
株式会社リクルートの「ホットペッパーグルメ外食総研」が実施した調査によると、3圏域計(首都圏・関西圏・東海圏)の2023年度の年間中食市場規模は前年度比-2.4%(1兆4,087億円)と推計されました。コロナ禍4年目において、外食市場規模はコロナ禍前の83.4%まで戻り、中食市場規模は115.6%となっています。
(出典:「2023年度外食&中食動向(2023年4月~2024年3月:東名阪夕食)」https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/2024/0925_14738.html)
これは興味深いデータで、中食市場がコロナ前の水準を15%以上も上回って定着していることを示しています。一方で2023年度に前年比でマイナスになったのは、外食市場の回復により一部の需要が外食に戻ったことを反映していると考えられます。
中食単価の上昇傾向
同調査では、1カ月あたりの中食実施率と実施者の購入頻度は前年度を下回ったものの、中食単価は前年度比+1.9%と増加したことが報告されています(出典:同上)。これは、消費者がより高品質な中食商品を選ぶ傾向が強まっていることを示唆しています。
他の市場調査機関による予測
富士経済の市場予測
富士経済の調査では、2023年見込みで中食市場は12兆8,300億円(2019年比117.7%)と予測されており、内食、中食は新型コロナ流行前の2019年の規模を超えて市場拡大が続くとしています。
(出典:「新型コロナ流行や価格改定の影響で変化がみられる」https://www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html?cid=23138&la=ja)
調査機関によって対象範囲や定義が若干異なるため数字に幅がありますが、いずれの調査でも中食市場が10兆円を超える巨大市場であり、コロナ前の水準を上回って成長を続けていることは一致しています。
消費者ニーズの多様化と高品質化

Ready to EatからReady to Heatへ
近年、内食と中食、そして外食の垣根はなくなってきており、調理済冷凍惣菜、イートイン、フードデリバリーなど、それぞれの間に位置するような業態や商品が増加しています。それに伴い、これまで「Ready to Eat」(そのまま食べられる)の商品と定義されていた惣菜が、現在では「Ready to Heat」(温めるだけで食べられる)の商品にまで拡大しています。
この変化は、消費者のニーズがより多様化・高度化していることを示しています。単に便利なだけでなく、より美味しく、より健康的で、より自分好みの食事を求める傾向が強まっているのです。
高品質・高付加価値商品への需要
中食が普及するにつれて、より手間のかかった料理や、健康志向から多品目の食材を使用した料理などが人気を集めるようになりました。また、高齢の単身・夫婦世帯は調理の手間を省くことに加え、少量でも品数や味、見た目にこだわるなど、消費者のニーズは多様化しています。
これは、中食市場が単なる「手抜き」のためのものではなく、より豊かな食生活を求める消費者の期待に応える方向に進化していることを示しています。
今後の展望と課題

構造的成長要因の継続
中食市場の成長を支える要因を振り返ると、単身世帯の増加、共働き世帯の拡大、高齢化の進展といった社会構造の変化は、いずれも今後も継続すると予想される長期的なトレンドです。これらの要因が続く限り、中食市場の基調は堅調に推移すると考えられます。
技術革新による可能性の拡大
冷凍技術や物流システムの高度化といった技術革新も、中食市場の発展を支えています。今後も、調理技術の向上、保存技術の発達、配送システムの効率化などにより、より美味しく、より安全で、より便利な中食商品が提供される可能性があります。
競争激化による品質向上
現在の中食業界は競争が激化していますが、これは消費者にとってはメリットです。各企業が消費者のニーズをくみ取り、より魅力的な商品を提供しようと努力することで、市場全体の品質向上が期待できます。
※中食業界の企業情報については「中食業界の主要企業一覧」で、中食と外食の比較については「中食vs外食徹底比較」で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
まとめ
中食市場は、私たちの日常生活に深く根ざした巨大な市場として成長を続けています。22兆円を超える市場規模は、単なる数字以上の意味を持っています。それは、現代日本の社会構造の変化、ライフスタイルの多様化、消費者ニーズの高度化を反映した結果なのです。
単身世帯の増加、共働き世帯の拡大、高齢化の進展といった構造的要因は今後も継続し、中食市場の成長を支え続けると予想されます。また、技術革新により商品の品質向上と利便性の向上も期待できます。
一方で、価格上昇が市場規模拡大の一因となっていることも事実です。消費者にとっては家計への影響もある中で、より価値のある商品・サービスが求められるようになるでしょう。
コンビニで弁当を買う、スーパーで惣菜を選ぶ、デリバリーアプリで注文する…こうした日常的な行動の積み重ねが、22兆円という巨大な市場を形成しています。私たちが普段何気なく利用している中食サービスが、実は日本経済の重要な一翼を担っているということを理解していただけたでしょうか。
今後も中食市場は、私たちの生活を支え、より豊かな食体験を提供し続けてくれることでしょう。その成長の背景には、現代社会の変化と消費者一人ひとりのニーズがあることを忘れずに、これからも中食を上手に活用していきたいものです。
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