「スーパーの仕事は誰でもできる」「指示通りに動くだけ」——そんなイメージを持っている方に、今回のニュースは一石を投じるかもしれません。
2026年5月、首都圏ベイエリアを中心に約40店舗を展開する食品スーパー「ワイズマート」が、スーパーマーケット業界で初となる2025年度「日本経営品質賞」大賞を受賞しました。
日本経営品質賞は1995年に創設され、変革のモデルとなる企業・組織を表彰する制度です。製造業や大手サービス業が多くの賞を受けてきたこの賞に、スーパーマーケットが初めて輝いたという事実は、業界関係者に驚きをもって受け止められています。
「小さなスーパー」が大賞を獲れた理由

ワイズマートの店舗は1店舗あたり100〜250坪と、業界平均の3分の1ほどの規模しかありません。大型店には品揃えでも売場面積でも及ばない「小さなスーパー」が、なぜ業界初の大賞を獲得できたのでしょうか。
受賞の核心にあるのは「店主集団経営」と呼ばれる独自の運営モデルです。青果・水産・畜産・惣菜といった各部門の責任者(チーフ)が、仕入れ・値付け・見切り・売場づくりに加え、パートスタッフの採用まで幅広い裁量を持ち、それぞれの部門を「ミニ経営単位」として自律的に運営しています。
その結果、坪効率(1平方メートルあたりの年間売上高)は業界平均の2.5倍以上、人時売上高は1.6倍に達しています。小さいながらも、生産性は大型店を大きく上回っています。
「指示待ち」ではなく「小さな経営者」として育つ職場

ワイズマートの取り組みで特筆すべきは、スタッフの育て方です。社長の吉野氏が目指したのは「経営者意識を持ち、自ら考えて動ける人材」。チーフだけでなくパート社員も「プチ改善活動」を通じて日常的な気づきを発信し、ビジネスチャットで全社共有する仕組みが整っています。
「数字が自分を褒めてくれる」という表現が印象的です。自分が仕入れた商品が売れると、その結果が数字として自分に返ってくる。単純な作業の繰り返しではなく、判断と結果が紐づく仕事として設計されています。
また2023年5月からは、グロサリー担当の社員が自由に参加できる「試食・商談・買い付け商談会」を開始。2025年5月までに25回開催し、取引先も約150社に拡大しています。バイヤーとしての感覚を現場スタッフが磨いていける環境は、一般的なスーパーでは珍しいものです。
離職率20%超から「あったかい会社」へ

現在のワイズマートからは想像しにくいかもしれませんが、吉野社長が2代目として就任した2001年当時は離職率が20%を超えていた時期もあったといいます。財務体質の弱さ・人員の不安定さを抱えた厳しい状況でした。
そこから経営の軸を変えたのが「大きな会社より、強い会社。かっこいい会社より、あったかい会社」という方針です。売上を追うより不採算店を閉じて社員の休みを確保することを優先し、独自の評価制度とフィードバックの仕組みをつくり上げました。この評価制度はビジネスモデル特許を取得するほどの独自性を持ちます。
「社員もパートも懸命に努力しているのに報いることができない」状況から、「一人ひとりが小さな経営者として育っていく」職場への変革は、20年以上にわたる地道な積み重ねの結果です。
スーパーの仕事は「やらされ仕事」ではなくなっている
ワイズマートの事例は、スーパーマーケットという職場の可能性を再定義するものです。品出し・レジ・陳列という表面的な仕事の見え方の奥に、仕入れの判断・売場の設計・スタッフのマネジメントという経営的な仕事が組み込まれている職場が存在しています。
飲食業界から転職してスーパーの惣菜部門・鮮魚部門・精肉部門に移る方が増えていますが、その選択が「逃げ」ではなく「キャリアの再構築」になり得るのは、こうした職場の実態があるからです。
「スーパーに転職する」ということは、単に環境を変えるだけでなく、食のプロとして主体的に働くキャリアを選ぶということでもあります。
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