青果物は鮮度が命。こうした新鮮な野菜や果物は収穫後すぐに品質が変化しやすいため、適切な温度や湿度、輸送時間の管理が欠かせません。
青果の運送会社は、果物や野菜の鮮度を保ちながら目的地へ移動させるためのスペシャリスト。適切な輸送環境を確保し、品質を維持しながらお客さまのもとに商品を配達しています。
今回は、青果物の運送を専門的に担う青果運送会社を深堀り! その特徴やサービス内容、選び方のポイントに加え、業界が抱える問題点などの最新動向も徹底解説します。
「青果の運送会社」とは?鮮度と品質を支える役割を深堀り!

多くの運送会社では、独自の冷蔵車両や設備を保有し、地域密着から全国対応まで幅広く輸送網を構築しています。まずは、青果物輸送の重要性や仕組みを把握し、青果運送会社がどのような役割を担っているのか確認しましょう。
そもそも“運送”とは? “配送” や“輸送” との違い
「運送」とは、主にトラックなどの車両を使って荷物を運ぶこと全般を指します。これに対して「配送」は、物流拠点から小売店や個人宅といった最終目的地への小口・短距離の運搬を指すのが一般的です。一方の「輸送」は、手段や距離を問わず、人や物を拠点から拠点へ運ぶ行為そのものを広く表します。
これらはいずれも、人や物を目的地へ届けるという“運輸”の一部であり、物流業界では明確に区別されています。

出典:浜松委託運送株式会社「運送と輸送と配送の違いについて」(https://www.itaku-unso.co.jp/news/5097/)
青果物は、イチゴやブドウのように 5 ℃前後で冷やさないと数時間で傷む果実もあれば、じゃがいも・さつまいものように 10 ℃以下で低温障害を起こす根菜、トマトやピーマンのように 20 ℃ほどの常温で短時間に運ぶほうが味を保てる夏野菜など、品目ごとに「ちょうどいい温度・湿度」がまったく違います。
一台のトラックに積んで走ればいい、というわけにはいかないのが、青果物流の難しさです。
そこで登場するのが青果運送会社です。具体的には、次のような仕組みで産地・市場・小売店を結んでいます。
- 荷室を複数の温度帯に分けられる冷蔵車を使って、「冷やす品」と「冷やし過ぎない品」を同時に運ぶ
- 収穫後すぐの予冷処理や 庫内の温度・湿度センサーによるリアルタイム監視で、途中の温度ムラや衝撃を最小限に抑える
- 交通状況や天候を加味したルート設計で、納品時間の遅延を防ぎ、鮮度を落とさない
このような工夫を重ねながら、「傷んで廃棄」や「値引き販売」になるリスクを避け、生産者には適正な収益を、消費者には新鮮なおいしさを届けています。
青果運送会社が提供する主要サービスとは?

青果運送会社の仕事は、ただ冷蔵トラックで青果物を運ぶだけではありません。産地での予冷付き集荷から温度帯別・低振動輸送、共同配送、最新設備まで、温度と衝撃を同時に管理して鮮度を守る仕組みがそろっています。
ここからは、このような具体的なサービス内容を「工程」「温度管理」「効率化」「拠点網」「設備」の5つの視点からわかりやすく紹介します。
集荷・仕分け・一時保管で鮮度をキープ
収穫したばかりの青果物は自らの呼吸熱で温度が上がりやすく、放っておくと味や見た目が一気に落ちてしまいます。
そこで運送会社は、畑や港で集荷した直後に予冷庫へ入れ、温度をすばやく下げます。葉物の場合は 0〜5 ℃、果実なら 5 ℃前後が目安です。仕分けは温度帯ごと・行き先ごとに分け、次の便まで冷蔵・冷凍庫で一時保管。湿度も 90 %前後に保つことで、乾燥による萎れを防ぎます。
多温度帯×低振動輸送で適温と衝撃を同時に守る
最近の冷蔵トラックは荷室をパネルで仕切り、複数の温度帯を同時に運べるタイプが主流です。
たとえば「2 ℃ゾーンでレタス」「5 ℃ゾーンでイチゴ」「15 ℃ゾーンでジャガイモ」といったように、それぞれの野菜や果物の特性に合わせた運び分けが可能。庫内には温度センサーがあり、設定を外れるとドライバーにアラートが届く仕組みです。
さらに、エアサス(空気ばね)を備えた車両なら、路面の揺れが和らぎ、裂果や打撲傷のリスクも格段に下げることができます。
共同配送でコストとCO₂を減らす
青果物の輸送量は、季節によって波があります。繁忙期は車両が足りず、閑散期は空荷が目立つ… このようなムダをなくすのが共同配送です。
複数の荷主の商品を一台にまとめることで、積載率が上がり、トラックの走行回数と燃料の使用量がぐっと減ります。小口のスーパー納品や飲食チェーン向け夜間便などで利用が広がっており、コスト削減とCO₂排出削減を同時に叶える方法として注目されています。
拠点ネットワークで地域密着と広域配送を両立
地域密着の運送会社は「午前に収穫→午後に店頭」のような超短時間納品が得意です。一方、全国展開の会社は主要都市に冷蔵センターを持ち、長距離区間を大型車、ラストワンマイル(顧客に商品が届くまでの最後の配送区間)を小型車で受け持つなど、拠点を連携させて広域配送を効率化しています。
距離やロットに応じてこれらのネットワークを使い分ければ、急な需要増による欠品や、過剰在庫のリスクを抑えられます。さらに冷蔵センターを経由しても温度管理が途切れないため、季節変動が大きい青果でも品質を安定して保てるのが強みです
先進設備で鮮度+効率を底上げ
近年は車両と保管施設の両方で新しい機器が導入され、鮮度保持と省コストに貢献しています。たとえば、具体的に次のような設備・仕組みが挙げられます。
● 真空予冷装置
収穫直後の葉物や花蕾類を箱詰めのまま30 分ほどで芯温を 4 ℃前後まで下げ、呼吸熱による劣化を大幅に抑制。まず投資が検討される装置。
● マルチ温度帯・低振動トラック
荷室を0 ℃・5 ℃・15 ℃などに仕切って複数温度を同時に維持し、空気ばねサスペンションで揺れを軽減。少量多品目の混載でも適温と衝撃対策を両立できる。
● IoT温度ロガー&クラウド監視
トラックや冷蔵倉庫の温度・湿度データをリアルタイムでクラウドに送信し、逸脱時に即アラート。荷主もスマホで確認できるため、品質トラブルの早期発見とクレーム削減に直結する。
これらの新しいハードとソフトの組み合わせにより、輸送ルートだけでなく「予冷→保管→輸送→納品」まで切れ目なく温度と品質をコントロールできる体制が整いつつあります。
失敗しない青果運送会社の選び方!押さえておきたい3つのポイントとは

青果の品質は 温度・時間・扱い方 のどれか一つでも崩れると一気に落ちてしまいます。したがって、運送会社を選ぶ際は、次の3つの観点をセットで総合評価することが欠かせません。加えて、万一のトラブルや予期せぬ需要変動へ柔軟に対応できる余力があるかどうかも、注目したいポイントです。
① 迅速で安全な配送体制
青果物は鮮度が落ちやすいため、目的地までの移動時間をできるだけ短くすることが理想です。同時に事故や積み荷の崩れを防ぐ安全対策も必須。
チェック例:
- 実車距離300 kmを翌朝までに納品できる夜間便や直行便を持っているか
- 車両の定期点検・ドライバー教育・速度管理装置など、安全を優先する仕組みがあるか
リードタイムを短縮しつつ事故リスクを最小限に抑えている会社は、日々の納品遅延やトラブルが少なく信頼できます。
② 冷蔵・冷凍設備と温度監視の充実度
青果物は温度や湿度の管理が悪いと、色や味の劣化だけでなく食品ロスにも直結します。車両や倉庫にどんな設備を持ち、どのように温度を監視しているかを必ず確認しましょう。
チェック例:
- 複数温度帯に対応できる冷蔵車や多温度帯倉庫を保有しているか
- IoT温度ロガーを使い、庫内温度の履歴を開示してもらえるか
- 緊急時に温度逸脱へ即対応できるマニュアルや24時間監視体制があるか
適切な設備と監視体制があれば、長距離輸送でも品質を安定して保てます。
③ 配送スケジュールの柔軟性
青果物の需要は季節や天候で大きく変わるため、配送スケジュールの柔軟性はとても重要です。急な注文や繁忙期でも対応できる予備車両・人員があるかを確認しましょう。
チェック例:
- 繁忙期に臨時便を手配できるか、夜間帯でも連絡が取れるか
- ドライバーの交代要員や協力会社ネットワークを持ち、欠員が出ても回せる体制か
対応力の高さはそのまま納品の安定度につながり、欠品リスクや機会損失を減らします。
実績と信頼性を見抜く!情報収集ガイド

青果運送会社を選ぶうえで、企業の規模や創業年数だけでなく、どのような取引先を持っているかや、これまでの配送実績をチェックすることが欠かせません。
口コミや評価サイト、業界内での評判など、多角的な情報を収集し、自社の商品を安心して任せられるかを総合的に判断しましょう。ここでは、実績・評判・サービス範囲の3点に絞って、比較のコツを紹介します。
過去の実績や取引先をチェックする
まずは会社の公式サイトや決算資料を確認し、創業年数や拠点数、年間の取り扱い量といった客観的な数字を把握しましょう。そのうえで、納品先リストに自社と同規模・同業態の取引実績があるかどうかを調べます。市場や大手量販店、外食チェーンなど大口顧客との取引事例が写真付きで紹介されていれば、一定の品質基準を満たしている証拠になります。
評判とコールドチェーン体制を確認する
次に、インターネットや業界紙、SNS などで社名を検索し、「遅延」「荷崩れ」などネガティブなキーワードがどれくらいヒットするかをチェックします。可能であれば既存の荷主にもヒアリングを行い、クレーム対応の早さや担当者の連絡頻度など、生の声を集めましょう。
あわせて、HACCPやISO 22000の取得状況、温度逸脱時の対応マニュアルの有無など、コールドチェーン体制が文書化されているかどうかも信頼度を測る材料になります。こうした情報を総合すれば、表面的な資料だけではわからない実力が見えてくるでしょう。
HACCP / ISO 22000 早わかりガイド
- HACCP(ハサップ)とは
食品の製造・流通工程で起こり得る危害を洗い出し、温度など “要所(CCP)” を常時監視して安全を守る衛生管理手法。 - ISO 22000 とは
HACCP をベースに、責任体制・記録管理・継続改善まで体系化した 国際規格の食品安全マネジメントシステム。
→ どちらも予冷・庫内温度・異常時の対応が文書化されているかを確認すると、運送会社の信頼度を測れます。
サービス範囲と費用を比べる
最後に、温度帯・ロット・距離といった条件をそろえて複数社から見積もりを取り、横並びで比較します。その際、共同配送の適用範囲や一時保管料金など、見積書に表れにくい“隠れコスト”も必ず確認してください。
加えて、IoT温度ロガーや多温度帯トラックなどの技術は、必ず仕様書や導入事例で確認し、自社の評価基準に当てはめて比較しましょう。見積価格だけではわからない性能差が明確になります。
このように、「実績で信頼性を測り、評判で運用品質を確認し、サービス範囲と費用で自社との相性を見極める」をセットで検証すれば、鮮度を守りつつコストも抑えられる最適な青果運送会社を選びやすくなるでしょう。
物流2024問題・エコ輸送・ICT活用… 青果運送における最新の取り組みとは?

規制強化や環境意識の高まりを受け、青果の運送業界は「ドライバー不足」「脱炭素」「DX(デジタル化)」の波によって変革を迫られています。ここでは、それぞれの最新トレンドと具体策を整理していきましょう。
物流2024年問題への対応と解決策
2024年の法改正でドライバーの年間残業時間に上限が設けられ、従来の長距離ワンマン運行ではスケジュール遅延のリスクが急拡大しました。そこで業界各社は、
- 共同配送の便数拡大(複数荷主を同一ルートに束ねて台数を削減)
- ハブ&スポーク型中継拠点の新設でドライバー交代を実施
- AIルート最適化で走行距離を10〜15%短縮
などの対策を加速。労務リスクを抑えつつ運賃高騰を防ぐ動きが広がっています。
環境に優しいエコロジー輸送技術
SDGs と CO₂ 排出削減を進める動きから、青果輸送でもエコ車両と再エネ導入が進行中です。たとえば、ディーゼルトラックを電動車両に置き換えたり、拠点のエネルギーを太陽光やバイオ燃料で補ったりするなど、積極的な取り組みを行う企業が増加しています。
とくに、電動車両は温度管理用サブバッテリーの独立化で庫内温度の安定性も向上し、鮮度保持と環境負荷低減を同時に実現できる点が評価されています。
取り組み | 効果 | 導入状況 |
---|---|---|
EV/FCEV トラック | 排気ゼロ・騒音低減 | 大手物流で幹線・都市内に順次投入 |
エコタイヤ+低燃費オイル | 燃費 3〜5%向上 | 中小含め普及段階 |
太陽光+バイオ燃料発電の冷蔵センター | 電力コストと CO₂ を30%削減 | 北関東・九州で実証施設稼働 |
ICT 活用で持続可能な流通システムへ
オンライン運行管理や AI予測の技術が普及し、ムダ・ムラのない配送計画が立てやすくなっています。
- クラウド TMS(輸配送管理):車両位置と温度ログをリアルタイム共有
- AI 需要予測 × 予約配送:出荷量変動を事前に把握し、過剰在庫や欠品を抑制
- 電子伝票・音声ピッキング:仕分けミスを減らし、作業時間を10〜20%短縮
これらの仕組みは、鮮度維持・利益改善・ドライバー負担軽減を同時に達成できるため、青果物流の標準装備になりつつあります。
まとめ
青果物流の本質は、いかにして「鮮度・スピード・効率」の3つを高いレベルで両立させるかにあります。
選ぶべき運送会社は、こうした課題に対して確かな設備と柔軟な運用力を兼ね備えているかどうか。実績・評判・技術を総合的に検証し、温度管理や共同配送など、自社ニーズに合った体制を整えているパートナーを選ぶことが、食品ロス削減とコスト最適化への近道となるでしょう。
さらに今後は、EVトラックの普及やAIによるルート最適化、再生可能エネルギーを活用した冷蔵センターの導入が加速し、それらを支える共同配送網も、より緻密につながっていくと考えられます。
こうしたデータとテクノロジーが物流現場に標準装備されることで、産地と食卓の距離はさらに縮まり、サステナブルかつ高品質な青果物流が“当たり前”となる時代へと移行していくのではないでしょうか。
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