生鮮食品と加工食品は、見た目は似ていても制度上の定義や表示ルールに違いがあります。店舗や事業者にとって、正しく分類し表示を行うことは法令遵守のみならず、トラブル防止にもつながります。
本記事では、制度面の基本から迷いやすい事例、実務で役立つチェックポイントまでを整理し、両者の違いをわかりやすく解説します。
生鮮食品と加工食品の制度上の違いを知る
生鮮食品とは、加熱や味付けなどを行わず、収穫やと畜後すぐに出荷される食品です。対して加工食品は、保存性の向上や利便性のために、加熱や調味、包装などの処理が行われたものを指します。
この制度上の分類は、表示義務や衛生管理にも関わる重要なポイントです。それぞれの定義や具体的な対象品目について詳しく確認していきましょう。
生鮮食品とは|制度上の定義と対象品目

生鮮食品は、農産物でいえば収穫した野菜や果物、水産物でいえば水揚げ直後の魚、畜産物でいえばと畜後にすぐ出荷された肉類などが該当します。
塩漬けや熱処理などの調理行為がなされておらず、あくまで素材そのものの状態を保っていることが条件です。これにより消費者は、産地や鮮度を直接感じ取りやすくなり、買い手側の判断にも役立てられます。
生鮮食品の主な種類
| 分類 | 具体例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 農産物 | 野菜、果物、穀類 | 収穫後、素材の状態を保持 |
| 水産物 | 魚介類、海藻類 | 水揚げ後、加熱・調理なし |
| 畜産物 | 牛肉、豚肉、鶏肉 | と畜後、味付けなし |
加工食品とは|調理・保存を目的とした処理の有無

加工食品は、食材に対して何らかの物理的・化学的処理が加えられ、元の状態から形状や性質が変化した食品を指します。加熱、塩漬け、くん製、発酵など多岐にわたる工程が含まれ、保存期間の延長や味付けなどを目的とした処置も広く認められています。
たとえ少しの工程でも素材の状態に変更を加えた場合は加工食品として認識されるため、法令上の表示に注意が必要です。
加工食品の主な種類
| 分類 | 具体例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 調理加工品 | カット野菜、味付け肉 | 物理的・化学的処理済み |
| 保存加工品 | 乾燥食品、冷凍食品 | 保存期間の延長が目的 |
| 発酵食品 | 漬物、味噌、醤油 | 微生物による発酵処理 |
| 加熱調理品 | 焼き魚、煮物、揚げ物 | 熱処理による調理済み |
生鮮と加工の判断が迷いやすい商品・具体例で比較

判断基準の考え方
生鮮と加工の判断が難しいのは、一部の処理や包装によってはどちらに当たるのか微妙なケースが存在するためです。たとえば、野菜を水洗いしたうえで袋に入れただけなら生鮮と見なされますが、カットして真空パックにした場合は加工になる可能性があります。こうした違いは、生産者や販売者の立場での取り扱い基準にも大きく影響を及ぼします。
よくあるグレーゾーンの事例
見た目では判断が難しい食品の中には、制度上「生鮮食品」と「加工食品」の分類が分かれるグレーゾーンが存在します。とくに加工工程が一部に含まれる場合や、販売形態により判断が分かれるケースでは、注意が必要です。
スチーム野菜については、軽く蒸してパッケージされた商品は非加熱ではなく加熱処理済みとされ、加工扱いとなります。炙りサーモンも同様で、表面だけの加熱であっても加工処理として判断されるケースが多くあります。また、皮むき済み果物では、切断や殺菌洗浄の有無により生鮮か加工かが分かれることになります。
このような事例は、見た目の印象と制度上の分類が一致しないため、制度理解と表示ルールの確認に注意が必要です。
法的定義に基づく判定方法
一般的に消費者は「手軽に食べられるかどうか」で加工だと判断しがちですが、法的にはそれだけでは決められません。食品表示法では、食品の素材特性が変化しているか、あるいは保存期間の長期化につながる工程があるかが重要な判断要素とされています。
サプライチェーンでの判断ポイント
実務では、商品がどこで加工工程を受けたのかを把握することが第一です。サプライチェーンの中で一部でも加工に該当する処理が行われていれば、その後の流通段階でも加工食品として扱う必要があります。誤って生鮮として扱うと、表示違反や行政指導の対象となる可能性があるため、初期段階の判定が非常に重要です。
加工食品とみなされるケース(具体例)
制度上、「加工食品」と判断されるかどうかは、素材の物理的・化学的変化の有無が重要なポイントです。
- カット野菜:千切りキャベツ、カットサラダ
- 味付け肉類:下味をつけた肉、漬け込み肉
- 漬物類:塩分や調味料による加工
- 乾燥食品:干物、乾燥野菜
これらは保存性の向上や下処理済みといった利便性のために何らかの工程が加わっており、加工食品としての表示義務が生じます。
生鮮食品として扱われるケース(具体例)
一方で、加熱や味付けなどの処理が加えられておらず、素材の状態を維持したまま流通する食品は、生鮮食品として扱われます。
- 包装野菜:袋詰めしただけの野菜
- 内臓処理魚:内臓を取り除いただけの魚
- カット前の果物:丸ごとの状態で包装された果物
- 精肉:部位ごとに切り分けただけの肉(味付けなし)
これらは食品の性質を変える加工が施されていないため、加工食品とは見なされず、生鮮品の表示ルールが適用されます。
業態別で注意すべき分類ポイント
スーパーマーケットでは、店内で野菜を細かく刻んでパック詰めしたり、解体した肉を小分けにして販売する場面が一般的です。このような場合、どの段階で生鮮と加工に分けるかが重要な判断ポイントになります。
惣菜店では、加熱調理・味付け工程があれば、基本的に加工食品として分類されます。飲食店での調理は消費者への直接提供であり、表示義務の範囲や責任の取り扱いも異なります。
加えて、介護施設・給食センター・ネットスーパーなどでは、加工品として納品された商品が「再加熱」「再盛付け」されるケースが多く、表示責任や記録義務が複雑化する傾向があります。業態ごとに制度解釈が変わる場面も多いため、各現場で判断基準を共有しておくことが不可欠です。
食品表示ルールの違いと実務上の注意点

表示ルールは、食品表示基準(消費者庁)に基づき、内容量や原材料、保存方法、期限表示、添加物などが細かく定められています。生鮮食品では産地・品目・名称の表示が中心となり、加工食品では原材料・添加物・内容量・保存方法・アレルゲン表示などが必須となります。
この違いは、消費者が購入時に正しく判断するための情報提供に関わるものであり、表示ミスは重大な信頼失墜や行政指導の原因になります。たとえば、食品表示基準(平成27年4月施行)は、「消費者が誤認しないこと」を原則とし、簡易包装や業務用であっても、流通条件により表示の義務範囲が変わることを定めています。
参考サイト:消費者庁
「食品表示基準 Q&A」(令和7年最新版) 」「知っておきたい食品の表示(令和7年4月版・消費者向け)」
生鮮食品の表示義務と注意点
生鮮食品の表示では、主に産地、品目、名称などが基本情報として求められます。これらの情報を明確に提示することで消費者が安心して購入でき、万一の問題発生時にも流通経路を追跡しやすくなる効果があります。特に輸入品の場合は、国名の表示も義務化されており、国内産との混同を避けるための大事なルールです。
| 表示項目 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 産地 | 都道府県名または国名 | 輸入品は国名表示必須 |
| 品目 | 商品の種類 | 正確な名称を記載 |
| 名称 | 商品名 | 消費者が理解できる表現 |
加工食品の表示義務(横断的・個別表示)
加工食品には、原材料や添加物、内容量、アレルゲンなどの記載が必要となります。横断的表示として、消費期限や保存方法の明記が要る場合も多く、商品特性に応じて個別の追加表示が義務づけられるケースもあります。
原材料名については、使用した重量の多い順に記載することが基本で、食品添加物は原材料と区別して表示する必要があります。アレルゲン表示では、えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生の7品目が義務表示対象となっており、これらを含む場合は必ず明記しなければなりません。
こうした表示は消費者が食品を安全に選択するための大切な手がかりとなるため、中身の透明性を確保する意味でも欠かせません。
表示省略できないケースと行政指導事例
小売業者が販売する加工食品は、原則として表示を省略することが難しいです。特に衛生管理が重要な食品や、事故が起きやすいアレルゲンを含む食品で表示不備があった場合には、行政指導や回収措置に発展することもあります。
過去の事例では、アレルゲン表示の漏れにより重篤なアレルギー反応を引き起こした事故が複数報告されており、製造業者に対する改善命令や製品回収が実施されています。
また、原産地の虚偽表示により消費者庁から措置命令を受けた事業者もあり、法令遵守は業者の社会的責任といえるでしょう。
参考サイト:消費者庁「食品表示等問題への取組状況について」
実務で役立つ見分けチェックリスト

最終的なチェック項目を整理し、誰でも簡単に生鮮・加工の判断ができるようにします。業務においては、どの工程を経たら加工食品になるのかを一覧化したチェックリストが有用です。
例えば、カットや味付け、保存性を高める殺菌・添加物使用の有無などを順番に確認し、該当する場合は加工食品と仕分けができます。こうすることで、現場のヒューマンエラーを減らし、トラブル防止にもつなげられるでしょう。
加工工程・保存条件での判別ポイント
生鮮と加工の線引きは、素材の形状変化や保存期間の延長を図る行程があるかどうかに着目します。
具体的には、包丁や機械でのカット、調味料による味付け、熱処理、化学的添加物の使用などがあげられます。これらの工程が一つでも該当すれば加工食品の可能性が高いため、忘れずにチェックしましょう。
| チェック項目 | 生鮮食品 | 加工食品 |
|---|---|---|
| カット・切断 | ||
| 味付け | ||
| 加熱処理 | ||
| 添加物使用 | ||
| 発酵・熟成 | ||
| 乾燥処理 |
表示責任を負う立場ごとのチェック視点
メーカーは原材料の正確な表示や危険要素を含む添加物の告知が主な責務です。小売店や飲食店などは、店内で独自の加工を行うかどうかで表示内容が変わるため、作業フローごとに責任範囲を確認する必要があります。
立場によってチェックすべきポイントが異なるため、事業者全体で情報を共有しておくとスムーズです。
よくある質問
まとめ
制度を正しく理解し、実務での分類と表示をスムーズに行えるよう心掛けましょう。
生鮮と加工は見た目だけでは判別が難しいケースが多いため、法的な定義や表示義務を正しく把握することが重要です。カットや味付けなど、少しでも加工に当たる工程が含まれれば加工食品として扱われ、表示内容や責任も変化します。
特に現場では、スチーム野菜や炙りサーモンなどのグレーゾーン商品で判断に迷うケースが頻発します。このような場合は、食品の素材特性に変化があるか、保存期間の延長につながる工程があるかを基準に判定することが必要です。
また、業態によって注意すべきポイントも異なります。スーパーマーケットでは店内加工の段階、惣菜店では調理工程など、それぞれの現場に応じた判断基準を整備しておくことが効果的です。各事業者は表示ルールやガイドラインを定期的に確認し、アレルゲン表示や原産地表示の漏れがないよう注意深く管理することで、消費者の安全と信頼を確保していきましょう。
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