大阪の商店街から始まり、わずか15年で売上100億円規模にまで成長した生鮮食材専門店「八百鮮」。「八百屋を、日本一かっこよく。」というビジョンのもと、バイヤーを置かず各店舗が自ら市場で仕入れるスタイルや、18時閉店・日曜定休といった業界の常識を覆す経営で注目を集めている。
今回は代表取締役の市原敬久氏と人材戦略部の海老原裕志氏に、独自のビジョン経営の裏側、130項目におよぶ評価制度、そして求める人物像について話を伺った。
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企業プロフィール

株式会社八百鮮
- 所在地:大阪府吹田市江坂町1-21-17 ESAKA松尾ビル4F
- 事業内容:生鮮食材専門店「八百鮮」の運営(青果・鮮魚・精肉の小売)
- 企業ビジョン:「八百屋を、日本一かっこよく。」
- 経営理念:「日本に、鮮度を。」
大阪の商店街から始まり、関西・名古屋・神戸エリアに10店舗を展開する生鮮食材専門店「八百鮮」。創業からわずか15年で売上100億円規模にまで成長を遂げた同社は、バローホールディングスのグループ企業でもある。
「八百屋を、日本一かっこよく。」というビジョンのもと、従来の生鮮業界の常識を覆す独自路線で注目を集めている。
今回は、同社の市原敬久代表取締役と、人材戦略部の海老原裕志氏に、会社の強みや成長の裏側、求める人物像について詳しく話を伺った。
※ 「——」はインタビュアーのものとして記載。
Q1. まずは株式会社八百鮮について教えてください。どのような特徴がある会社でしょうか?

市原氏: 八百鮮は、大阪の商店街を中心に関西・名古屋・神戸エリアに店舗を展開している生鮮食材専門店です。野菜・鮮魚・精肉を扱っていて、もともとは八百屋からスタートしました。
うちの一番の特徴は、バイヤー制度を設けず、各店舗の店長が自ら市場に仕入れに行くというスタイルですね。普通のスーパーだと、本部のバイヤーが仕入れて各店舗に配送するのが一般的ですが、うちは店長がその日に売りたいものを自分で決めて仕入れてくるんです。
—— バイヤーがいないというのは、かなり型破りですね。それは創業当時からそうだったのでしょうか?
そうですね。創業当初は50万円を握りしめて市場に行って、その日に売り切るということをやっていましたから。仕入れの裁量を店舗に完全に委ねているというのは、うちの最大の強みだと思っています。
店長が自分で市場の仲買さんと関係を築いて、交渉して安く仕入れてくる。そしてそれを自分たちで値段を決めて売る。いわば飲食店でいうところの “店長おすすめ” しかないようなものです。
—— 毎日の売場が変わるということですよね。お客さんにとっても面白い体験になりそうです。
そうなんです。定番の商品を並べるだけではなく、エンタメ的な要素も大事にしています。例えばイチゴで売場を埋め尽くしたり、ハンマーヘッドシャークや巨大カジキのような珍しい魚を仕入れてインパクトのある売場を作ったり。そういった自由な発想が現場から生まれてくるのが、八百鮮らしさだと思います。
このように、株式会社八百鮮は「各店舗による自主仕入れ」と「エンタメ性のある売場づくり」という、通常のスーパーマーケットとは一線を画す独自のスタイルを確立している。
市場との関係性を一人ひとりが築き、自分の商売として売場を動かす。その現場主義の徹底ぶりこそが、八百鮮の成長を支える原動力だ。
Q2. 「八百屋を、日本一かっこよく。」というビジョンについて伺います。このビジョンに込めた想いとは?

市原氏: もともと僕は「面白い会社を作りたい」と思って起業したんです。でも、創業して10年目くらいで40億円規模になったときに、壁にぶつかりました。会社は忙しいのに人が増えない、辞めていく人も多い。
そのとき気づいたんです。僕自身が言っていることとやっていることが一致していないと。「面白い会社を作ろう」と言って起業したのに、気づけば「売上を上げろ」「利益を上げろ」としか言っていなかった。それでは普通の会社と変わらないですよね。
—— 原点に立ち返ったということですね。
はい。そこから会社を作り直す覚悟で組織づくりに着手しました。まずビジョンを作り、そのビジョンに沿った評価制度を整備して。当時、経常利益が2,000万円程度だったのに、組織改革のためのコンサルティング契約に6,000万円を投じたんです。
—— 経常利益2,000万円で6,000万円の投資。相当な覚悟ですね。
周りからは「おかしくなったんじゃないか」と言われましたよ。ホームページを刷新したり、社内カレンダーを作ったり、そこにお金を使うくらいなら給料に回してほしいと言って辞めていった人もいます。
でも、ビジョンを形にしない限り、この会社は変わらないと確信していました。結果的に5年かけて組織を作り直し、10年かけて40億円だった売上が、その後5年で100億円になった。あの6,000万円の投資は十分に回収できたと思っています。
「八百屋を、日本一かっこよく。」というビジョンは、単なるスローガンではない。市原氏が自らの経営の失敗と葛藤を経て辿り着いた、会社のすべての判断基準となる “軸”だ。
ビジョンに沿った決断を貫くからこそ、組織に一貫性が生まれ、社員の信頼と納得感につながっている。それが八百鮮という組織の強さの源泉なのだろう。
Q3. ビジョンに基づいた具体的な経営判断について教えてください。

市原氏: わかりやすい例でいうと、うちは18時閉店・日曜定休なんですよ。
売上や利益のことを考えれば、日曜日に営業すれば間違いなく売上は伸びるし、18時以降も開ければもっと稼げる。でも、「八百屋を日本一かっこよくする」というビジョンに照らし合わせると、従業員が働きやすい環境を作ることが最優先なんです。
—— ビジョンと売上の間で、ビジョンを優先するということですね。
そうです。八百屋で働きたい、魚屋で働きたいという人を増やすことが僕らの使命なんです。だから、かっこいい業界を作るために、閉店時間を早くしてプライベートを充実させてもらう。それでいて年収は900万円、1,000万円を目指せる環境を作る。
—— 生鮮業界でその年収水準は驚きです。
そういう業界に変えていかないと、そもそもこの業界で働く人がいなくなっちゃいますから。長時間働いても大して稼げないとなったら、「なんで働いてるんだっけ」って迷っちゃうじゃないですか。
僕らの考える「かっこいい」の定義は、「愛される・憧れられる」ということ。世の中の人たちが魚屋で働くことや八百屋で働くことに憧れを持てるようにしないといけない。だから働き方改革も年収アップも、社員総会や運動会の開催も、すべてビジョンから逆算して実行しているんです。
ビジョンを掲げるだけでなく、日々の経営判断をすべてビジョンに紐づけて実行しているのが八百鮮の最大の特徴だ。
18時閉店も日曜定休も、単なる働き方改革ではなく、「かっこいい業界を作る」というビジョンに基づいた”覚悟のある判断”。言っていることとやっていることの一致が、社員の信頼を勝ち取り、組織の結束力を生んでいるのだ。
Q4. 評価制度について教えてください。独自のポイント制があると伺いました。

市原氏: はい。うちの評価制度はかなりこだわって作っています。約130項目の評価基準があって、それをポイント化しているんです。
—— 130項目! かなり細かく設計されていますね。
ざっくり言うと、「かっこいいかどうか」をめちゃくちゃ分解して130項目にしたものです。それに加えて、売上と利益のコミットメントもあります。
ポイントの仕組みとしては、5,000点を超えると仕入れに行く権限が得られ、7,000点を超えると店長になれる資格がもらえる。全項目でS評価がつくと16,000点くらいになるんですが、実際にそこまでいく人はいなくて、大体10,000点を超えたら年収1,000万円超え、5,000点くらいでも年収500万円以上は確保されています。
—— 仕入れの権限や店長資格がポイントで決まるというのは面白いですね。店長候補が増えてきたらどうするのでしょうか?
逆なんですよ。店長を任せられる人材が育ってきたら、その人のために新しい店を出すんです。「この子が上がってきたから、この子に店を任せよう」という考え方で出店を決めています。
—— 人が先で、出店が後ということですか。
そうです。僕が「10店舗出すぞ」と先に決めて、人がいないのに出店するようなことをしたら組織は崩壊しますよ。会社の成長スピードと人材の成長スピードを合わせていく。これがすごく大事だと思っています。
八百鮮の評価制度は、ビジョンを数値に落とし込み、社員の成長と会社の成長を連動させる仕組みだ。
「かっこいいかどうか」を130項目に分解し、ポイント化して可視化する。そのポイントが仕入れ権限や店長資格、そして出店計画にまで直結している。組織の成長ドライバーは「採用と育成」であるという市原氏の確信が、この評価制度の根幹にある。
Q5. 活躍する人材の特徴と、採用で見ているポイントを教えてください。

市原氏: 活躍する子は、基本的に市場に連れていっても気後れしない人ですね。市場ってちょっとやんちゃな人が働いている場所じゃないですか。そこで「これはおいくらですか?」みたいなテンションの人は、やっぱりちょっと厳しい。
僕も昔、市場の先輩に「優等生じゃなくていいから、元気で馬鹿を演じて、でも実はそろばんができるやつになれ」と言われたんですよ。
—— 気後れしない、気負けしないという資質は、面接でどのように見極めるのでしょうか?
正直、面接だけでは難しいですね。だから実際に現場に入ってもらって一緒に働いてみるんです。新卒の場合は市場に連れて行ったり、内定者研修でイベント催事をやらせたりします。そこで、元気があるか、臨機応変に動けるか、仲間になれるかどうかを見ています。
海老原氏: 採用に関しては、異業種からの転職者が多いのも八百鮮の特徴です。うちのホームページやSNSを見て「こんな面白い八百屋があるのか」と興味を持って応募してくる方が多いですね。
逆にスーパーで好成績を残してきた経験者がうちに合わないこともあります。普通のスーパーの仕組みに慣れている人ほど、うちのやり方に戸惑うことがあるんです。
—— 確かに、定番で揃えたい派の方にはギャップがありそうですね。
市原氏: 実際、10人中1人くらいが市場でバイヤーとして大活躍するイメージです。残りの9割の方には、評価制度に沿って半年くらいかけてステップアップしてもらっています。
八百鮮が求めるのは、スキルや経験以上に「この業界をかっこよくしたい」という熱量と、現場で気後れしない行動力だ。
異業種からの転職者が多いという事実が、それを裏付けている。決まったマニュアルどおりに動くのではなく、自分の判断で市場を攻略し、自分の売場を作っていく。そんな”商売人”としてのマインドがある人こそ、八百鮮で輝ける人材なのだろう。
Q6. バローホールディングスのグループに入った経緯と、その後の変化を教えてください。

市原氏: 「八百屋を日本一かっこよくする」というビジョンを実現するためには、自己資金だけでは限界があったんです。
当時、銀行からの融資枠が約10億円で、そのうち8億円はもう使っていました。1店舗作るのに相当の投資がかかりますし、投資回収に平均7年かかるとすると、自己資金だけでは10年で1店舗しか出せない。これでは「日本一」に到達するまでに時間がかかりすぎる。
—— ビジョンの実現スピードを上げるための決断だったのですね。
そうです。バイアウトして株を売却してゴールする経営者も多いですけど、僕の発想はまったく逆です。グループに入ることで資金面の制約を外し、ビジョン実現までの時間を一気に短縮する。そのためにグループ入りを決めました。
条件として出したのは、僕が経営者として残ることと、八百鮮の独自路線を変えないこと。この2つだけです。
—— 実際にグループ入り後、変化はありましたか?
バローグループからは、買収した別の生鮮企業の社長も任されることになりまして。今は2社合わせて約200億円規模で事業を展開しています。ただ、2社の色は混ぜないようにしていて、あえて競い合わせることで切磋琢磨させています。
グループ入りの判断も、すべてはビジョンに照らし合わせた最短ルートの選択だった。
自らの手で経営を続けながら、ビジョンの実現を加速させる。「経営者として残る」「独自路線を貫く」という2つの条件を守りながら、規模の拡大を実現している点に、市原氏のビジョン経営への揺るぎない信念が表れている。
Q7. 市原社長ご自身の原点について伺います。経営者として大切にしていることは?

市原氏: 僕の父親が福祉関係のNPO法人を立ち上げていて、障害者雇用のことをやっていたんです。障害のある方が月1万円しかもらえないところもある中で、経営のノウハウを持てば月15万円払えるようになるんじゃないかと取り組んでいた。
父がいろいろな事業所の所長さんたちに会いに行くのを見ていて感じたのは、彼らにとってお金を儲けることよりも、雇用を守ること、地域に貢献することが最優先だったということです。
—— その体験が経営観に影響しているのですね。
はい。ビジネスや経営がマネーゲーム化していく時代に、僕が目の前で見ていたのは「ロマン」だったんですよ。経営というのは、人を幸せにするための手段なんだと。
だから僕は、売上や利益を上げることを事業の “目的” にしてはいけないと思っています。「八百屋を日本一かっこよくする」ことが目的であり、売上と利益はそのための手段。ここをすり替えてしまうと、どこにでもある会社になってしまう。
—— 経営者ではなく “ロマンの人” なんですね。
よく言われます(笑)。でも本当にそうかもしれません。バンドをやっていた頃から、最初にライブの日程を押さえて、メンバーを集めて、そこに向けて全力で準備するみたいなやり方でしたから。ゴールを先に決めて、そこに全力で走る。経営もまったく同じ感覚です。
市原氏の経営の根底にあるのは、父の背中から学んだ「経営はロマンだ」という信念だ。
売上よりもビジョン、利益よりも仲間の幸せ。その価値観が、八百鮮という会社のすべてを貫いている。「経営者として優秀になりたいのではなく、変わった面白い会社を作りたい」と語る市原氏の言葉に、この会社の本質が凝縮されているのではないだろうか。
Q8. 最後に、生鮮業界への転職を検討している方へメッセージをお願いします。

市原氏: 僕らがこの仕事をしている理由は、この業界で働く人たちが仕事の面白さに気づき、業界全体が盛り上がっていくことなんです。
八百鮮は「怖そう」「ぎらついてそう」というイメージを持たれることもありますけど、実際はめちゃくちゃ優しいし、やっていることは真面目に積み上げているだけなんです。
決まったものを決まったように売る仕事ではなく、自分で仕入れて、自分で値段を決めて、自分の商売として売場を作る。こんな面白い仕事は他にないと思いますよ。
海老原氏: 僕は元々人材業界にいたんですが、八百鮮の社長と実際に会って、将来のビジョンを聞いて2週間で入社を決めました。採用面も組織づくりもこれからすごく面白いフェーズになると確信したからです。
自分で商売がしたい人、型にはまらない働き方がしたい人には、最高の環境だと思います。
生鮮業界の常識を覆し、「かっこいい」を体現し続ける八百鮮。同社が求めているのは、スキルや経験よりも「この業界を変えたい」「自分の力で商売がしたい」という熱い想いだ。
なお、このような方には、とくにおすすめしたい企業だ。
- 自分の裁量で仕入れから販売まで手がけたい方
- 生鮮業界で年収1,000万円を目指したい方
- 型破りな環境で自分の力を試したい方
- ビジョンに共感できる仲間と働きたい方
- 異業種から生鮮業界に挑戦してみたい方
- 商売の原点を体験したい方
どれかひとつでも「面白そう」と感じた方は、ぜひ一度八百鮮の門を叩いてみてほしい。「日本一かっこいい八百屋」を一緒に作る仲間との出会いを、同社は心から楽しみにしている。
オイシルキャリアでは、食品業界・生鮮業界の非公開求人を多数取り扱っています!八百鮮を含むスーパーマーケット、生鮮業界での転職をお考えの方はお気軽にご相談ください!


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