食卓でよく目にする「精肉」「生肉」「正肉」という言葉。それぞれの定義や特徴を正しく理解しておくと、肉の選び方や扱い方がスムーズになります。
特に生肉や正肉は、用途や安全対策が精肉とは異なる部分が多いため、知っておくとより安全にお肉を楽しめるでしょう本記事では、それぞれの違いを一覧で比較したうえで、定義・用途・安全対策をわかりやすく解説します。
精肉・生肉・正肉とは

肉には「精肉」「生肉」「正肉」という分類があり、それぞれが異なる加工度や用途を持っています。これらの違いを知ることで、より適切な肉選びができるようになります。
精肉・生肉・正肉の一覧で比較
まずは3種類の肉を総合的に表で比較して、それぞれの基本的な特徴と違いを理解しましょう。
定義・特徴 | 主な用途 | 安全面のポイント | |
---|---|---|---|
精肉 | 骨・内臓などを除去し、食べやすい形に加工した肉 | 家庭料理、外食産業 | 冷蔵・冷凍保存、部位別保存期間・調理法 |
生肉 | 非加熱のままで提供する、特殊な工程を経た肉 | ユッケ、刺身、馬刺し、生ハムなど(生食メニュー) | 厳格な法的基準、交差汚染防止、徹底した衛生管理 |
正肉 | 精肉から皮・筋膜・脂肪を除去し、可食部を厳選した肉 | ハム・ソーセージなど加工食品、業務用調理、ひき肉原料 | 工場レベルでの温度・衛生管理、一般消費者向け流通少ない |
これらはすべて「食用の肉」ですが、加工度や用途、安全対策がそれぞれ異なるのが大きな特徴です。以下では、それぞれの肉についてより詳しく見ていきましょう。
精肉(せいにく)とは?

精肉は私たちが最も身近に接する肉の種類。
スーパーや精肉店で購入する肉のほとんどがこれにあたります。精肉業界で働く方々は、この精肉の加工や販売に携わることが多いでしょう。
精肉の定義
精肉とは、食用として飼育された牛・豚・鶏などから、食べられない部分を取り除き、調理しやすい状態にした肉です。スーパーや精肉店で販売される一般的な肉の多くが精肉に該当します。
骨や内臓、皮などを除去し、すぐに調理できる形に加工された肉です。スーパーや精肉店で販売される一般的な食肉であり、食用として飼育された牛・豚・鶏などを処理し、部位ごとに分割・加工した肉を指します。
このように、精肉は家庭や外食産業で広く利用される最も一般的な肉の形態です。
精肉の特徴
精肉は、一般家庭や飲食店で最も多く利用される食肉です。牛肉・豚肉・鶏肉など種類が豊富で、部位ごとに食感や風味が異なります。調理方法によって適した部位を選ぶことで、料理の仕上がりが大きく変わるのも特徴です。
例えば、牛肉のサーロインやリブロースは霜降りが多くステーキに向いており、モモやウデは赤身が多く煮込み料理に適しています。豚肉や鶏肉も同様に、部位によって脂肪の量や硬さが異なるため、適切な使い分けが大切です。
部位ごとに焼肉用・ステーキ用・煮込み用などに分類されるのが特徴で、牛肉・豚肉・鶏肉など種類が豊富で、幅広い調理に対応しています。また、一部、熟成肉や生ハムなどの特殊加工品も含まれ、脂肪の量や肉質(柔らかさ・風味)により用途が異なります。
精肉は、部位の特性を活かした調理をすることで、最適な味や食感を楽しむことができます。食肉を扱う業界では、こうした特徴を理解し、消費者や飲食店に適切な部位を提案する技術が求められます。
精肉の用途
精肉はその汎用性の高さから、様々な料理や場面で活用されています。以下にその主な用途をいくつか紹介します。
具体例と特徴 | |
---|---|
家庭料理 | ・カレーやシチュー、炒め物、トンカツ、ステーキなどの多様な料理に活用 ・部位によって脂身の量や肉質が異なるため、料理に合わせた選択が重要 |
外食産業 | ・レストラン、居酒屋などでの幅広いメニューに使用 ・焼肉店やステーキ専門店で提供される肉も、基本的に精肉として仕入れ |
イベント・アウトドア料理 | ・バーベキューなどの機会での活躍 ・骨付き肉は「精肉」として扱われる場合もあるが、一部は特殊加工が必要 |
精肉は家庭から飲食店、イベントまで幅広く使われており、その多様性が精肉業界の奥深さを表しています。精肉の専門家は、こうした様々な用途に合わせた最適な肉の提案や加工ができることが期待されています。
精肉の安全対策
精肉は生鮮食品であるため、適切な衛生管理が非常に重要です。精肉業界では、これらの安全対策を徹底し、流通過程での品質管理や消費者への適切な情報提供を行うことが求められます。
正しい保存方法や調理法を伝えることで、食の安全を支える重要な役割を担っています。以下に安全に取り扱うためのポイントを紹介します。
要冷蔵・冷凍で保存
精肉は温度管理が最も重要な食品の一つです。購入後は速やかに冷蔵庫(約4℃以下)で保存し、常温での放置は絶対に避けるべきです。常温では細菌が急速に増殖し、わずか2時間で食中毒のリスクが高まります。
特に夏場は気温が高いため、買い物後はクーラーバッグなどを使用して早めに冷蔵庫に入れることが望ましいでしょう。冷凍する際は空気を抜いてラップで密閉し、解凍は冷蔵庫内でゆっくりと行うのが理想的です。電子レンジでの急速解凍は、部分的に加熱されて肉質が変わることがあるため注意が必要です。
調理器具の衛生管理
精肉を扱う際の交差汚染防止は食中毒予防の基本です。肉を切った包丁やまな板をそのまま他の食材、特に生食する野菜などに使用すると、食中毒菌が移ってしまいます。理想的には肉専用のまな板と包丁を用意し、使用後は熱湯や漂白剤で消毒することが望ましいでしょう。
また、調理中の手洗いも重要です。精肉に触れた後は必ず石鹸で手を洗い、清潔なタオルやペーパータオルで拭きましょう。冷蔵庫の取っ手や調味料の容器なども、精肉に触れた手で扱うと汚染が広がる可能性があります。
期限や鮮度のチェック
期限や鮮度のチェックも欠かせません。精肉の消費期限は部位によって異なるため、購入時に確認することが大切です。一般的に、脂身の多い部位(バラ肉など)は酸化しやすく傷みも早いため、赤身の部位より保存期間が短くなります。購入した精肉は、パッケージに表示された期限内に使い切るよう心がけましょう。
鮮度の見分け方も覚えておくと安心です。新鮮な肉は赤身が鮮やかで弾力があり、脂肪が黄色く変色していません。異臭やぬめり、表面が乾燥して変色している場合は、微生物が増殖している可能性があるため、食べずに廃棄するのが安全です。
生肉(なまにく)とは?

生肉とは、加熱処理されていない肉全般を指します。
これには、一般的な精肉店で販売される未加熱の肉や、特別な衛生基準を満たした生食用肉が含まれます。法律で厳しく管理されており、安全性に特に注意が必要です。精肉業界の中でも、専門的な知識と技術が求められる領域です。
生肉の定義
生肉とは、非加熱で食べることを目的とした食肉であり、特定の安全基準を満たしたもののみ市場に流通します。
生食用として特定の基準を満たし、加熱処理なしで提供される食肉です。例えば、ユッケ、馬刺し、牛タタキなど(特別な安全基準をクリアしたもの)があります。「生ハム」「熟成肉」は非加熱ですが、塩漬けや発酵などの加工を経るため、生食用食肉とは別分類になります。
生肉の特徴
生肉は、加熱せずに食べることを前提とした特殊な食肉です。ユッケや馬刺し、牛タタキのように、そのまま食べることで独特の食感や風味を楽しむことができます。しかし、加熱しないことで細菌のリスクが高まるため、通常の精肉よりも厳格な衛生基準のもとで加工・管理されています。
特に牛肉の生食については、2011年に発生した食中毒事故を受けて、厚生労働省が「生食用食肉の規格基準」を制定しました。この基準では、生食用の牛肉は表面を60℃で2分以上加熱処理することが義務付けられており、許可された施設のみが提供できます。
生食用として認められたもののみ市場に流通しており、2011年以降、牛肉の生食には表面加熱(60℃で2分以上)が義務付けられている点が重要です。通常の精肉よりも低温管理や菌数管理が厳格であり、新鮮さが最も重要で、保存方法や提供方法に注意が必要です。
生肉は、美味しさだけでなく安全性が最優先される食材です。飲食店や精肉業界では、法的基準を遵守しながら、安全に提供するための管理が欠かせません。
参考サイト:厚生労働省: 生食用食肉の規格基準
生肉の用途
生肉は主に特定の料理や専門店で提供されることを目的としています。生肉を扱う精肉業界の仕事では、これらの特殊な加工技術や衛生管理の知識が必要となります。
飲食店や専門店との連携も重要であり、高度な専門性が求められる分野といえるでしょう。以下にその主な用途を紹介します。
具体例と特徴 | |
---|---|
ユッケ・馬刺し・刺身・牛タタキ | ・新鮮な牛肉・馬肉を低温殺菌 ・表面加熱などの工程で安全性を高めた料理 ・独特の食感と風味を楽しむための特殊な調理法 |
生ハム・熟成肉 | ・塩漬けや熟成を行い、微生物の繁殖を抑えて安全性を確保した加工品 ・一般的な「生食用食肉」とは異なる安全基準が適用される |
特殊メニュー・専門店 | ・レストランや居酒屋での特別メニューとして提供 ・家庭ではリスクが高く、専門店での提供が基本 |
生肉の安全対策
生肉の安全対策については、特に厳格な対応が求められます。生肉を扱う精肉業界の仕事では、これらの安全対策を徹底することで、安全で美味しい食体験を消費者に提供し続ける責任があります。
安全性の確保は精肉業界で働く人々の重要な責務であり、専門的な知識と徹底した管理が不可欠です。主な安全対策は以下の通りです。
法的基準・表示の確認
法的基準・表示の確認が重要です。「加熱用」肉を生で食べることは絶対に避けるべきです。これらは生食用の基準を満たしておらず、食中毒の危険性が非常に高いためです。
「生食用」と明確に表示された製品のみが安全基準をクリアしています。ただし、生食用の表示があっても、購入後はできるだけ早く消費するのが原則です。
交差汚染防止が必須
生肉を扱う際は、他の食品への細菌の二次汚染(交差汚染)を防ぐことが重要です。そのためには、生肉専用の調理器具(包丁・まな板)を用意し、他の食材と完全に分けて使用することが基本となります。
調理後は、器具を熱湯や除菌剤で徹底的に洗浄・消毒し、次の使用に備えることが必要です。また、調理の順序も重要で、生肉は他の食材の後に扱うよう心がけると、交差汚染のリスクを低減できます。
信頼できる店舗・処理工程
信頼できる店舗・処理工程を選ぶことも重要です。飲食店で提供される場合、規格基準を満たした施設のみ許可されていることを確認することが必要であり、これらの施設では、専用の加工室や厳格な温度管理、定期的な細菌検査など、通常の精肉処理以上の安全対策が実施されています。
一般家庭での「ユッケ」や「馬刺し」の調理は、こうした設備が整っていないため推奨されません。生食を楽しむ際は、認可された店舗や専門店を選び、適切な処理がなされていることを確認することが重要です。
正肉(しょうにく)とは?

正肉は主に加工食品の原料として使われる、高度に加工された肉の種類。一般消費者が直接目にする機会は少ないですが、ハムやソーセージなどの製造に欠かせません。精肉業界の中でも特に食品加工分野に関わる重要な要素です。
正肉の定義
正肉とは、精肉よりもさらに不要な部分を取り除き、加工食品の原料として使用される肉です。
加工食品向けに特化した食肉であり、主に食品加工メーカーや外食産業で使用されます。可食部のみを厳選し、均一な品質を保つために加工されるのが特徴です。
このように、正肉は一般消費者向けではなく、業務用としての利用が中心です。
正肉の特徴
正肉は、加工食品の原料として使用されるため、精肉よりもさらに不要な部分を取り除き、均一な品質に整えられた肉です。ハムやソーセージ、ひき肉製品などの加工食品の原料となるため、歩留まりの向上や一定の品質を保つことが求められます。
また、大規模な飲食チェーンや給食センターでは、均一な品質の肉を大量に調達する必要があるため、正肉の安定供給が欠かせません。これらの用途に応じて、食肉工場では特定のレシピや加工方法に適した形で肉を整えます。
均一な品質の原料として加工食品に使用されることが多く、消費者が直接購入することはほとんどありません。食品工場で特定のレシピに合わせた加工が施され、歩留まり向上と最終製品の品質安定化に貢献しています。
正肉は、一般の消費者が直接目にすることは少ないものの、食品加工業界にとっては欠かせない食材です。食品メーカーや外食産業と密接に関わりながら、安全かつ高品質な肉の供給が求められます。
正肉の用途
正肉は主に加工食品の原料や業務用途として使用されます。正肉を扱う精肉業界の仕事では、一定の品質を維持するための技術や知識が重要です。
加工食品メーカーとの協力関係を築き、製品の品質向上に貢献する役割を担っています。以下にその主な用途を紹介します。
具体例と特徴 | |
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加工食品の原料 | ・ハム・ソーセージ・ひき肉製品などの製造に使用 ・脂肪分が少なく、赤身が多い状態を作り出しやすい特性 ・ひき肉加工時も筋膜や余分な脂肪が少なく、食感や味わいの均質化 |
業務用・大量調理 | ・レストランや給食センターなどで均一な品質の肉を安定供給 ・食肉工場で特定のレシピに合わせた原料肉として活用 |
正肉の安全対策
正肉は加工食品の原料として大量に扱われるため、工場レベルでの衛生管理が特に重要です。正肉に関わる精肉業界の仕事では、これらの安全対策を徹底することが求められます。
国際的な品質管理基準に基づいた衛生管理や、トレーサビリティシステムの構築などの専門知識が必要とされる分野です。主な安全対策は以下の通りです。
工場レベルの衛生管理が重要
正肉を扱う施設では、HACCPやISOなどの国際的な食品安全管理基準に従った徹底した衛生管理が行われています。製造環境の清潔さ、作業員の手洗い・消毒、専用作業着の着用など、様々な面から衛生管理を徹底しています。
特に温度管理は重要で、細菌増殖を防ぐため原料肉の受け入れから加工、保管まで一貫した低温管理が必須です。2021年6月からは日本国内のすべての食品関連事業者に対し、HACCPに沿った衛生管理の導入が義務化されました。
HACCP(ハサップ):2021年6月より、日本国内のすべての食品関連事業者に対し、HACCPに沿った衛生管理の導入が義務化。食品製造の工程ごとに危害要因を分析し、リスクを低減するための国際的な食品安全管理手法
参考サイト:厚生労働省 HACCPの義務化について
流通経路の監視
流通経路の監視も重要な安全対策です。正肉は大量に仕入れて加工する工程が多いため、一度のミスが大規模な食品事故につながる可能性があります。そのため、原料肉がどこの農場で飼育され、どのように処理されたかを追跡できるトレーサビリティシステムの構築が不可欠です。
多くの食肉加工メーカーでは、原料肉の受け入れ時にロット番号や生産農場の情報を記録し、製造から出荷までの全工程で追跡可能にしています。これにより問題発生時も迅速に原因を特定できます。
一般消費者には直接届かないケースがほとんど
一般消費者には直接届かないケースがほとんどであり、正肉は主に食品加工メーカーや外食産業向けに流通し、一般消費者が直接購入することはほとんどありません。ハム、ソーセージ、冷凍食品、レトルト食品など、多くの加工食品の原料として使用されるため、最終製品の品質に直結します。
食品メーカーでは受け入れた正肉に対して自社基準による検査を実施し、規格外の製品は排除されます。このように、正肉そのものは目に見えなくても、その安全管理が私たちの食卓を支えているのです
まとめ

精肉業界で働く上で重要な「精肉(せいにく)」「生肉(なまにく)」「正肉(しょうにく)」の違いについて詳しく解説しました。それぞれの特性を簡潔にまとめると、以下になります。
- 精肉:骨や不要部分を除去した一般的な食肉。加熱前提で使われる
- 生肉:非加熱で食べるため厳格な衛生管理が必要。家庭での取り扱いはリスクが高い
- 正肉:加工食品や業務用に使われる可食部のみの肉。工場レベルの管理が不可欠
精肉は家庭向け、正肉は加工用、生肉は特別な基準が必要 という違いを理解し、安全管理の重要性を押さえておくことが求められます。食の安全と品質を支える精肉業界は、今後も進化を続けていくでしょう。
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