2026年6月のスーパーマーケットの売上が、前月から急ブレーキをかけました。全国スーパーマーケット協会など3団体が2026年7月21日に公表した「スーパーマーケット販売統計調査」によると、6月の全店売上高は前年同月比100.9%。5月の104.4%から一気に減速し、既存店ベースでは99.7%とマイナスに転落しています。
経営者の実感を示す売上高DIも、前月の+8.8から当月−6.6へと大きく低下しました。数字の上では「ほぼ横ばい」に見える6月ですが、その内側では部門ごとに明確な明暗が分かれています。
結論から言えば、6月の伸び悩みは景気の急変ではなく、前年が特殊すぎたことの反動が大きな要因です。本記事では、公表データをもとに何が起きていたのかを3つの背景から整理し、スーパー業界で働く人にとって何を意味するのかまで解説します。
2026年6月のスーパー売上は前月から急ブレーキ

全店100.9%、既存店は99.7%でマイナス転落
2026年6月のスーパーマーケット全店売上高は1兆1,243億円(112,432,249万円)で、前年同月比100.9%でした。数字だけを見ればプラスを維持しています。
しかし、前年と当月の両方で営業していた店舗のみを比較する「既存店」ベースでは99.7%となり、前年割れとなりました。全店がプラスなのは新規出店分が上乗せされているためで、1店舗あたりの実力で見ると売上は前年を下回っていたことになります。
5月確報104.4%からの落差が示すもの
6月の数字が注目されるのは、単月の水準よりも前月からの落差にあります。同時に公表された5月実績の確報版では、全店104.4%、既存店103.1%と好調でした。
つまりわずか1カ月で、全店ベースで3.5ポイント、既存店ベースで3.4ポイントの減速が起きたことになります。
| 区分 | 2026年5月(確報) | 2026年6月(速報) |
|---|---|---|
| 全店売上高 前年同月比 | 104.4% | 100.9% |
| 既存店売上高 前年同月比 | 103.1% | 99.7% |
| 売上高DI | +8.8 | −6.6 |
数字で見る2026年6月のスーパー実績

販売統計調査(速報版)の主要数値
販売統計調査はパネル270社を対象とした集計で、6月時点の総店舗数は8,605店舗、総売場面積は約1,441万平方メートルに達します。店舗平均月商は13,066万円、売場1平方メートルあたりの売上高は7.8万円でした。
5月の店舗平均月商が13,449万円だったことと比べると、1店舗あたりの月商も400万円弱減少しています。
経営動向調査のDIは軒並み悪化
販売統計調査と同時に公表される「スーパーマーケット景気動向調査」では、中核店舗の経営状況がDIという指標で示されます。6月実績は114社の回答をもとにした集計です。
主要なDIは以下の通りで、売上高・収益・来客数がいずれもマイナス圏に沈みました。

注目すべきは、客単価DIと販売価格DIがプラスを保っていることです。価格上昇によって1品あたりの単価は上がっているにもかかわらず、来客数が大きく落ち込んだために売上全体がマイナスに転じたという構図が読み取れます。
「DI」とは何を示す指標か
DI(Diffusion Index)は、売上金額そのものではありません。「前年同月と比べてどうだったか」を各社が5段階で回答し、その構成比を点数化した景況感の指標です。
0がちょうど前年並みで、プラスなら好調と答えた企業が多く、マイナスなら不調と答えた企業が多いことを意味します。売上高の前年同月比が100.9%であってもDIがマイナスになるのは、大手企業の数字が全体を押し上げる一方で、不調を実感している企業のほうが社数として多いためです。
全体は横ばいでも、中身は二極化していた

生鮮3部門は103.9%と全体を下支え
部門別に見ると、6月の実態がはっきりします。生鮮3部門の合計は全店103.9%、既存店でも102.6%と好調を維持しました。
内訳は畜産104.7%、水産104.2%、青果103.1%。惣菜も102.5%とプラスを確保しています。総売上高がかろうじて前年を上回ったのは、生鮮と惣菜が全体を支えたからにほかなりません。
畜産では鶏肉や挽肉、豚肉の切落しなど価格訴求しやすい商品が堅調に動き、水産ではかつおや塩干品、魚惣菜が売上を牽引しました。青果は国産さくらんぼが豊作で入荷が回復し、大きく伸長しています。
一般食品97.8%・非食品96.6%が足を引っ張った
一方で、加工食品と非食品は明確に前年を下回りました。一般食品は全店97.8%、非食品は96.6%。日配も全店100.7%とかろうじてプラスですが、既存店では99.5%とマイナスに沈んでいます。
| 部門 | 全店 前年同月比 | 既存店 前年同月比 |
|---|---|---|
| 畜産 | 104.7% | 103.2% |
| 水産 | 104.2% | 102.7% |
| 青果 | 103.1% | 101.9% |
| 惣菜 | 102.5% | 101.3% |
| 日配 | 100.7% | 99.5% |
| 一般食品 | 97.8% | 96.7% |
| 非食品 | 96.6% | 96.0% |
景気動向調査のカテゴリー別DIでも、同じ構図が確認できます。

惣菜が安定してプラス圏を維持する構造については、関連記事「スーパーの惣菜売上が過去最高を更新し続ける理由」で詳しく解説しています。
スーパー売上が伸び悩んだ3つの背景

背景1:前年6月が「観測史上最も暑い6月」だった反動
最大の要因は天候、正確には「前年との気温差」です。
気象庁によると、2025年6月は北日本・東日本・西日本のいずれでも1946年の統計開始以降、6月として1位の高温を記録しました。地域平均気温の平年差は北日本+3.2℃、東日本+2.3℃、西日本+1.8℃。長期の気候変動監視に使う15地点の観測値による日本の月平均気温偏差は+2.34℃で、それまで最高だった2020年の+1.43℃を0.91℃も上回っています。
(出典:気象庁「2025年6月の天候」 https://www.data.jma.go.jp/cpd/longfcst/monthly/202506/202506m.html )
一方の2026年6月は、上旬から中旬にかけては平年を上回る気温で推移したものの、下旬に大きく気温が下がりました。前年との差で見ると、下旬は北日本太平洋側で−5.1℃、東日本太平洋側で−4.0℃、西日本太平洋側で−3.8℃と、全国的に前年を大きく下回っています。
つまり2026年6月が特別に寒かったわけではなく、比較対象の2025年6月が異常だったということです。前年に猛暑で売れた飲料、アイス、麺類、冷し麺といった涼味関連商品が、今年は同じようには動かなかった。日配DIが前月+5.1から−7.9へ転落した主因はここにあります。
非食品でも同様に、防虫・殺虫関連などの季節商材が不調との声が多く挙がりました。
背景2:政府備蓄米による米の特需が消えた
2つ目は米です。2025年は米価格の高騰と品薄が社会問題となり、その対応として政府備蓄米の店頭販売が進みました。結果として2025年6月のスーパーには、通常では起こらない米の需要が発生していました。
2026年6月はその反動を受けています。景気動向調査でも、前年の備蓄米販売や米不足による需要増の反動が売上を押し下げる要因になったと明記されました。相場下落に伴って販売価格の見直しや低価格帯商品の訴求が進んだものの、1品あたりの単価が下がったため売上確保にはつながりにくい状況です。
影響は米そのものにとどまりません。前年の米不足時に代替需要が高まった乾麺や一部のインスタント食品でも反動が見られ、一般食品DIは前月−3.0から−15.2へと落ち込みました。7カテゴリー中で最も悪い数字です。
背景3:日曜日が前年より1日少ない曜日回り
3つ目は曜日回りです。2026年6月は前年同月と比べて日曜日が1日少ない構成でした。
スーパーにとって日曜日は来客数が最も多い曜日のひとつであり、これが1日減るだけで月間の来店機会が直接的に失われます。来客数DIが前月−4.0から−13.2へと悪化した背景として、この曜日回りの影響が挙げられています。
ただしこの要因は暦の巡り合わせによるもので、翌月以降には持ち越されません。3つの背景のうち、最も一過性が強い要因と言えます。
地域と企業規模で分かれた明暗

関東102.4%が唯一の牽引役、北海道・東北と九州・沖縄はマイナス
地方別に見ると、全国一律に落ち込んだわけではないことが分かります。
関東地方は全店102.4%と最も高く、既存店でも100.3%とプラスを維持しました。近畿101.1%、中国・四国101.0%、中部100.7%が続きます。
これに対して北海道・東北は98.8%、九州・沖縄は98.7%と前年割れ。既存店ではそれぞれ98.4%、98.3%まで落ち込みました。5月時点では九州・沖縄が105.9%と全国トップだったことを踏まえると、地域による振れ幅の大きさが目立ちます。
小規模チェーンほど厳しい(1〜3店舗95.7%)
保有店舗数別の集計では、規模による差がより鮮明です。
1〜3店舗の企業は全店・既存店ともに95.7%と最も低く、4〜10店舗が99.1%。一方で11〜25店舗は101.1%、51店舗以上は101.1%と、規模が大きいほどプラスを保っています。
仕入原価の上昇局面では、調達力とスケールメリットを持つ企業ほど価格をコントロールしやすく、小規模事業者ほど収益を圧迫されやすい構造があります。この差は、転職先を検討する際の企業の体力を測るひとつの視点にもなります。
景況感の悪化と、続く消費者の節約志向

景気判断DI 41.7、消費者購買意欲DI 41.2へ低下
売上だけでなく、経営者の景況感も悪化しました。中核店舗における景気判断DIの現状判断は前月から5.7ポイント低下して41.7となり、見通し判断も41.0へ下がっています。景況感DIは50が判断の分かれ目であり、40台前半は慎重な見方が支配的な水準です。
消費者購買意欲DIも現状判断で41.2(前月比−3.3)と低下しました。長期的に見ると、2023年から2024年にかけて50近辺まで回復していた水準から徐々に乖離しており、2026年に入っても改善局面への回帰は確認されていません。
仕入原価は高止まり、食品仕入原価DIは62か月連続プラス圏
売上が鈍化する一方で、コスト側の圧力は緩んでいません。食品仕入原価DIは15.7と前月からは低下したものの、これで62か月連続のプラス圏です。生鮮仕入原価DIも13.5と二桁プラスを維持しています。
5年以上にわたって仕入原価が上がり続けている状況で、売上が前年を割り込んだ。収益DIが前月+2.0から−10.5へ転落したのは、この挟み撃ちの結果です。
販売価格DIが16.1とプラスを保っていることからも分かるように、各社は価格改定で対応しています。しかし来客数と買上点数の伸び悩みが続いており、価格転嫁だけでは売上を維持しきれない局面に入りつつあります。生活者の節約志向、生活防衛意識の強さが数字に表れていると言えるでしょう。
2026年後半の見通しとスーパー業界で働く人への示唆

夏物需要の本格化と物価高対策の不透明感
今後については、気温上昇に伴う夏物需要の本格化が期待される一方、物価高対策の先行きが不透明という見方が示されています。仕入原価や各種コストの上昇、消費マインドの慎重さが収益面の重荷となる可能性があり、売上確保と利益確保の両立が引き続き課題となります。
ただし、6月の落ち込みの主因が前年の特殊要因の反動である以上、7月以降は比較対象が変わることで数字の見え方も変化します。2025年7月も記録的な高温が続いた月であるため、前年比での厳しさはしばらく続く可能性がありますが、構造的な需要の減退とは切り分けて見る必要があります。
売上と利益の両立が問われる局面で評価される人材とは
今回のデータから業界の人材ニーズを読み取ると、方向性は比較的はっきりしています。
売上が伸びにくい局面で企業が求めるのは、粗利を作れる部門と人材です。生鮮3部門と惣菜が全体を支えた6月の構図がまさにそれで、加工食品の仕入販売と違い、生鮮・惣菜は加工技術や売場づくりによって付加価値を生み出せます。
相場が動く中で仕入れを判断し、値入れと鮮度をコントロールできる人材の価値は、こうした厳しい月ほど高まります。景気動向調査のコメントでも、価格訴求しやすい商品への切り替えや販促の工夫によって数量を確保した店舗が挙げられており、現場の判断が結果を左右していることが分かります。
生鮮部門で培った経験がどのように評価されるかについては、「スーパー精肉部門の仕事内容とは?将来性や適性を解説!」や「スーパーからの転職は難しい?経験を活かせる転職先と成功のコツを解説」もあわせてご覧ください。
まとめ
2026年6月のスーパーマーケット販売統計は、全店100.9%、既存店99.7%と前月から急減速しました。ただしその内実は、景気の急変ではなく前年の特殊要因の反動によるところが大きいと言えます。
要点を整理すると次の通りです。
ひとつめは、前年6月が観測史上最も暑い6月だったことによる涼味関連商品の反動。ふたつめは、政府備蓄米による米の特需が消えたことによる一般食品の落ち込み。みっつめは、日曜日が1日少ない曜日回りによる来客数の減少です。
一方で生鮮3部門は103.9%、惣菜は102.5%とプラスを維持しており、全体を下支えしました。加工食品や非食品が落ち込む中で、生鮮と惣菜が収益の柱として機能する構図は今後も続くと見られます。
売上と利益の両立が問われる局面だからこそ、現場で数字を作れる人材の価値は高まります。スーパー・生鮮業界でのキャリアを考えている方は、企業の規模や部門ごとの状況を踏まえたうえで検討を進めてみてください。
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【出典】
一般社団法人全国スーパーマーケット協会・一般社団法人日本スーパーマーケット協会・オール日本スーパーマーケット協会「スーパーマーケット販売統計調査 2026年6月実績 速報版/5月実績 確報版」(2026年7月21日公表)
同「スーパーマーケット景気動向調査 2026年7月調査結果(6月実績)」(2026年7月21日公表)
気象庁「2025年6月の天候」 https://www.data.jma.go.jp/cpd/longfcst/monthly/202506/202506m.html


