青果・水産・畜産、売場はどう動く?2026年6月生鮮データに見る仕入れ・品揃えの勝ち筋

青果・水産・畜産、売場はどう動く?2026年6月生鮮データに見る仕入れ・品揃えの勝ち筋
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監修者のアバター       葛川英雄      

水産市場の競り人、生鮮食品業界、人材業界で培った豊富な経験を持つ食のプロフェッショナル。現在は株式会社オイシルの代表取締役として、10年以上の業界経験を活かし、生鮮業界やスーパーマーケット業界の発展に貢献しています。

生鮮3部門(青果・水産・畜産)は、2026年6月も前年を上回る水準を維持した。「スーパーマーケット販売統計調査」(パネル270社集計)によれば、生鮮3部門合計は既存店ベースで前年同月比102.6%。数字だけ見れば悪くない月だ。

ところが、同時に公表された「スーパーマーケット景気動向調査」のカテゴリー別DIを見ると、青果2.5・水産7.4・畜産6.4と、いずれも前月(青果7.2・水産14.3・畜産9.8)から大きく低下している。前年は上回っているのに、勢いは明らかに落ちている――これは「踊り場」の状態だと言っていい。今回はその中身を、品目レベルまで掘り下げて見ていく。

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目次

数字は良いが、中身は入れ替わっている

まず全体感を整理しておこう。

  • 青果:全店103.1%/既存店101.9%
  • 水産:全店104.2%/既存店102.7%
  • 畜産:全店104.7%/既存店103.2%(3部門中もっとも高い伸び率)

いずれもプラスは維持しているが、DIの低下が示すのは「前年ほどの勢いでは売れていない」という実感だ。実はこの「前年超えだが勢い鈍化」という状態の裏では、売れる品目そのものがかなり入れ替わっている。全体の数字だけを見ていると、この入れ替わりは見えてこない。

青果:天候が主役の月だった

青果DIは2.5(前月7.2から低下)。天候・相場・入荷状況に振り回された月だった。

好調だったのは、前年不作の反動もあって入荷が回復した国産さくらんぼだ。値ごろ感と販促効果が重なり大きく伸長したほか、桃やキウイフルーツも売上を下支えした。一方で、低温・降雨の影響を受けたサラダ関連や夏野菜は店舗によって伸び悩み、梅は今年も不作で相場高となり、梅酒関連商材まで含めて不調に終わった。

ここから見えてくるのは、「天候リスクを前提にした差配ができたかどうか」で明暗が分かれたということだ。同じ気候条件のもとでも、入荷の回復が見えた品目にいち早く売場面積を振り向けられた店舗と、前年の売れ筋を引きずったままだった店舗とでは、結果に差がついたはずだ。青果は天候による「揺れ」が大きい部門だからこそ、揺れそのものを前提にした運用力が問われる。

水産:相場に振り回されない品目が勝った

水産DIは7.4(前月14.3から低下)。魚種ごとの差が特に大きかった月だ。

かつおは水揚げ・相場が安定し、販売強化もあって売上をけん引した。切身や刺身も堅調で、塩鮭やちりめん類などの塩干品も販促効果を伴って全体を下支えした。一方で、まぐろ類、たこ、一部いか類は原価高・入荷不足の影響で苦戦し、養殖魚・輸入魚・冷凍魚も高値が続き、販売や利益確保に苦慮する声が多かった。

水産は本来、原価変動の影響をもっとも受けやすい部門のひとつだ。今回のデータが示しているのは、「相場が高止まりしている魚種に固執せず、相場が安定している魚種を主役に据え替える判断」ができたかどうかという分岐点だ。仕入担当者にとって、”何を諦め、何を主役にするか”の判断がそのまま数字に表れた月だったと言える。

畜産:値ごろ感と行事需要の二正面

畜産DIは6.4(前月9.8から低下)。相場高・原料高が続くなかでも、比較的値ごろ感のある商品が堅調に推移した。

鶏肉、挽肉、そして豚肉の中でも輸入豚肉や切落し・薄切りといった価格訴求しやすい商品が売上を下支えした一方、国産豚は高値感から販売点数が減少した。加工肉(ハム・ベーコン・ソーセージ類)も販売点数が減少している。

興味深いのは、そんな中でも国産牛・和牛・焼肉用が、父の日需要によって伸長した店舗があったという点だ。これは「値ごろ感の訴求」とは真逆の、”行事提案で単価を取りにいく”売り方であり、畜産という一つの部門の中に、性格の異なる二つの勝ち筋が同時に存在していたことになる。値ごろ品で客数を守りながら、行事需要ではしっかり単価を取る。この二正面作戦をどこまで意識的にできていたかが、店舗ごとの差になったはずだ。

3部門に共通する構造:値ごろ感のある品目が客数を支える

青果・水産・畜産に共通するのは、「相場が手頃な品目・部位」が客数と売上を下支えしているという構図だ。生鮮品仕入原価DIは13.5(前月比-6.3)、食品仕入原価DIは15.7(前月比-5.1)と、伸びは鈍化したもののいずれも依然プラス圏にあり、原価高止まりの状況は変わっていない。この中でどう値ごろ感のある品目・部位へ売場の重心を移せるかが、3部門に共通する課題だ。

オイシル視点:この勝ち筋を支えているのは「人」

ここまで見てきた「差配」「判断」「二正面作戦」は、いずれもマニュアル化しづらいものばかりだ。天候や相場の変化を見て、その週・その日の品揃えを組み替える判断は、経験を積んだバイヤーやチーフの目利きに大きく依存する。父の日のような行事需要も、待っていれば自然に売れるものではなく、いつ・どんな形で仕掛けるかという企画力の差がそのまま数字に出る。

言い換えれば、生鮮部門は他の部門に比べて「個人のスキルが数字に直結しやすい」領域だということだ。これは経営側から見ればリスクでもあるが、働く側から見れば、経験と専門性を積み重ねるほど市場価値が上がりやすい領域だとも言える。前回の記事で触れた通り、原価高・人件費高で利益が圧迫される今の経営環境だからこそ、こうした「利益を生み出せる現場の目利き力」の価値は、これまで以上に評価されていくはずだ。

まとめ

生鮮3部門は全体としては前年を上回る水準を維持しているが、その内実は品目・部位ごとの明暗がこれまで以上にはっきりしてきている。気温上昇に伴う夏物需要の本格化を控え、天候・相場の変化への対応力と、値ごろ訴求・行事提案の使い分けが、今後の売場づくりのポイントになりそうだ。

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出典:全国スーパーマーケット協会・日本スーパーマーケット協会・オール日本スーパーマーケット協会「スーパーマーケット景気動向調査 2026年7月調査結果(6月実績)」「スーパーマーケット販売統計調査資料 2026年6月実績」(いずれも2026年7月21日公表)

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この記事を書いた人

オイシルメディア編集部。
”「美味しい」を身近に。”をミッションに生鮮業界、スーパーマーケット業界に関する情報を発信していきます。
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