スーパーの発注業務は、売れ行きを見込みながら日々行う地道な仕事です。近年は、この発注業務にAIを活用する動きが広がりつつあります。
本記事では、公的機関の資料や企業の公式発表をもとに、スーパーにおけるAI発注の仕組みやメリット、導入企業の取り組みを紹介します。
※本記事は2026年7月時点の情報です。
この記事でわかること
- 惣菜スタッフの仕事は、調理・仕込みから盛り付け、陳列、発注・在庫管理、清掃・衛生管理まで5つの工程に分かれる
- 雇用形態はパートタイマーが59.3%でもっとも多く、正社員は25.4%。中間管理職を目指す道もある
- 時給はパート1,184円・正社員1,847円が目安で、正社員の平均年収は396.7万円
- 学歴や資格は不要で、未経験からでも半年ほどで基本業務を覚えられる
- 立ち作業や交替制勤務など体力を使う場面もあるが、作業の多くは空調管理された室内で行われる
スーパーの「AI発注」とは
AI発注とは、過去の販売実績や天候、イベント情報などのデータをもとに、AIが商品ごとの適正な発注数を算出する仕組みです。
需要予測にもとづく自動発注の仕組み
AI発注サービスの多くは、POSデータによる販売実績や在庫情報、天気予報などを組み合わせて需要を予測し、店舗ごとに発注数を提案します。需要予測型自動発注サービスを提供するシノプスは、販売実績や天気予報などのデータから、店舗にあわせた発注数をAIが算出する仕組みを採用しています。
あわせて、来店客数の予測や、店舗ごとの在庫状況をリアルタイムで把握する機能を持つサービスもあります。
出典:株式会社シノプス「ベイシア、全136店舗へ自動発注サービス『sinops-CLOUD』導入」2025年6月25日
従来の発注方法との違い
従来の発注は、担当者が過去の経験や当日の状況をもとに、手作業で発注数を判断する方法が中心でした。AI発注では、この判断の一部をシステムに置き換えることで、担当者の経験値による差を抑えることを目指しています。
ただし、AI発注に完全に切り替える場合と、担当者の最終確認を残す場合など、運用方法は企業によって異なります。
なぜスーパーにAI発注が必要とされているのか

AI発注の導入が検討される背景には、従来の発注方法が抱えるいくつかの課題があります。
発注担当者の経験・勘への依存
発注数の判断が担当者個人の経験や勘に頼る部分が大きいと、担当者によって精度にばらつきが生じやすくなります。異動や退職によって担当者が変わった際に、精度が一時的に落ちてしまうことも課題のひとつです。
人手不足・業務負荷の増加
発注業務には、売れ行きの確認や在庫の把握など一定の時間がかかります。人手不足が課題となる中、発注業務にかかる時間を減らし、他の業務に人員を振り分けたいという事情から、AI発注の導入が検討されるケースもあります。
賞味期限が短い商品の発注精度の難しさ
日配品や惣菜、パンなど、賞味期限が短い商品は、需要予測の難しさが特に大きい商品カテゴリーです。
実際に、ベイシアが以前使用していた自動発注システムでは、賞味期限の短い商品において発注精度が上がりにくいという課題があったことが、新たなシステムへの切り替えを検討するきっかけとなっています。
出典:株式会社シノプス「ベイシア、全136店舗へ自動発注サービス『sinops-CLOUD』導入」2025年6月25日
AI発注を導入するメリット

AI発注の導入によって期待される効果を、業務面と数値面の両方から紹介します。
発注業務にかかる時間の削減
発注数の算出をシステムが担うことで、担当者が発注のために費やしていた時間を、接客や品出しなど他の業務にあてやすくなります。発注スキルの習得に時間がかかっていた新人スタッフでも、比較的早い段階から発注業務に関わりやすくなる点もメリットです。
欠品・廃棄ロスの削減
需要予測の精度が上がることで、売れ残りによる廃棄ロスと、品切れによる欠品の両方を減らせる可能性があります。ベイシアの実証実験では、日配品の食品ロスが0.6%削減され、パンの開店時の欠品も改善されたことが確認されています。
物流・品出し作業の効率化
需要予測にもとづいて発注量やタイミングを調整することで、納品や品出しの回数そのものを見直せる場合があります。発注が細かく頻繁に発生することによる品出し作業の負担を軽減できる点も、AI発注が注目される理由です。
AI発注導入の課題・注意点

AI発注にはメリットがある一方で、導入にあたって検討しておきたい点もあります。
導入・運用コスト
システムの導入や月々の利用には費用がかかります。店舗数や利用する機能の範囲によってコストは変わるため、見込まれる効果とのバランスを踏まえた検討が必要です。
既存データの整備
AIによる需要予測は、過去の販売データや在庫データの蓄積を前提としています。データの記録方法が店舗ごとに異なっていたり、記録の精度にばらつきがあったりすると、予測の精度にも影響が出る可能性があります。
現場での運用体制づくり
システムを導入しても、現場のスタッフが提案された発注数をどう扱うかという運用ルールが定まっていないと、十分な効果が出にくくなります。担当者の最終確認をどこまで残すかなど、店舗の実情に合わせた運用体制を整えることが求められます。
スーパーにおけるAI発注の導入事例
実際にAI発注を導入した企業の取り組み例として、ベイシアの事例を紹介します。
ベイシアの事例(需要予測型自動発注サービスの導入)

株式会社ベイシアは、以前から需要予測型の自動発注システムを利用していましたが、日配品など賞味期限の短い商品で発注精度が上がりにくいことや、発注が頻繁になることで品出し作業の負担が増えるといった課題を抱えていました。
この課題の解決を目的に、需要予測型自動発注サービス「sinops-CLOUD」を提供する株式会社シノプスと連携し、2024年12月から一部店舗で実証実験を実施しています。
実証実験では、日配品の食品ロスを0.6%削減したほか、パンの開店時における欠品の改善も確認されました。この結果を踏まえ、2025年6月、ベイシアが運営する食品スーパーマーケット全136店舗への「sinops-CLOUD」導入が決定したと発表されています。導入されるサービスは、以下のとおりです。
| サービス名 | 内容 |
|---|---|
| リアルタイム在庫 | 店舗ごとの在庫・売上情報をリアルタイムで把握する |
| 客数予測 | 天候・イベントなどを加味し、時間帯別の客数を予測する |
| 日配 | 日配品に特化した需要予測型自動発注 |
| パン | パンに特化した需要予測型自動発注 |
| グロサリー | 調味料・缶詰・飲料などグロサリーに特化した需要予測型自動発注 |
| 雑貨 | 雑貨に特化した需要予測型自動発注 |
過去の販売実績や天候予報など複数のデータをもとに、店舗ごとの発注数をAIが算出する仕組みで、発注業務の担当者による経験や勘への依存を減らすことを狙いとしています。なお、発表時点では2025年夏頃の全店舗本格稼働を目指すとされており、その後の稼働状況を示す続報は確認できていません。
出典:株式会社シノプス「ベイシア、全136店舗へ自動発注サービス『sinops-CLOUD』導入」2025年6月25日
ライフコーポレーションの事例(AI-Order Foresightの導入)

食品スーパー「ライフ」を展開するライフコーポレーションは、日本ユニシスと共同開発した自動発注システム「AI-Order Foresight」を2021年2月に全278店舗へ導入しました。
ヨーグルトや豆腐、パンなど2,000種類以上の日配品を対象に、過去2年分の販売実績や気象情報、催事情報などから需要を予測し、複数の統計解析結果の中からAIが最適なものを選んで「推奨発注数」を提示する仕組みです。導入により、全店合計で年間のべ40万時間かかっていた発注業務の作業時間を5割以上削減したと報じられています
出典:JBpress「スーパーの商品発注業務をAIで半減へ」2021年3月12日
ヤオコーの事例(発注時間の大幅な短縮)

食品スーパー「ヤオコー」は、日立製作所のソリューションをベースにした需要予測型自動発注システムを全182店舗に導入し、2023年2月21日に発表しました。
棚割システムと連携し、気象や販促企画、曜日変動など30種類の変動要素データを活用することで、従来は対応が難しかった消費期限の短い商品でも需要予測が可能になっています。導入の結果、発注業務にかかる時間を約85%短縮し、在庫を約15%削減する効果が確認されたと報じられています。
出典:日経クロステック「AIが需要を予測、スーパーのヤオコーが自動発注システム導入で発注時間約85%短縮」2023年3月3日
よくある質問
ここまでの内容と関連して、スーパーのAI発注について寄せられやすい疑問をQ&A形式で紹介します。
まとめ
AI発注は、過去の販売実績や天候などのデータをもとに、AIが発注数を算出する仕組みです。担当者の経験や勘に頼っていた従来の発注方法に比べ、発注業務の時間削減や、欠品・廃棄ロスの削減が期待されています。
一方で、導入・運用コストやデータ整備、現場での運用体制づくりといった検討事項もあります。ベイシアの事例のように、実証実験で効果を確認したうえで段階的に導入を進める例も見られ、自社の課題に合わせた検討が重要です。
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